家族支援専門看護師 永富美和

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家族支援専門看護師は、2008年に日本看護協会が認定したまだ新しい分野であるため、その活動をご存じない方も多いと思います。私がこの分野を学習したいと思ったのは、第一子を出産して間もなく、自分の両親を病気で亡くしたことが大きく影響しました。終末期の患者の家族として、介護をしたくてもできない無力感、自責の念を経験し、自分のこれまでの看護を振り返り、患者さんの家族に起きていることや家族の思いを本当に理解して援助ができていたか、と問い直すきっかけとなりました。そして、看護師だからこそ患者さんだけでなく家族に寄り添うことを大切にしながら、家族の生活、思いを理解し、気軽に相談できる医療者でありたいと強く思うようになりました。幸い、上司をはじめ周囲の方々のご支援のおかげで、就学、資格を取得することができました。

senmon-kazoku-shien_nagatomi-michi_s近年の少子高齢社会を背景とした様々な社会現象は、人々の生活や医療・看護の現場に大きな影響を与えており、介護などの家族が抱え込んでいる大きな負担の実態は、社会における家族看護の必要性をクローズアップしており、今後ますます増大していくと考えられます。現在、私は退院支援室で勤務していますが、高度急性期病院である当院において、複雑な治療状況下にある患者・家族のニーズは身体・心理・社会的側面から包括的な支援を必要とされます。家族支援専門看護師として、医療と生活を統合し、入院中から外来・在宅でのケアを予測し、包括的にアセスメントを行い、必要とされる医療とケアが一貫して提供されるために患者・家族のみでなく、医療スタッフや在宅支援者に対しての働きかけも重要であると考えています。

患者さんはそもそも家族の中で生活を営む家族の一員であり、患者さんが病気になったことで、他の家族員も心理的な動揺だけでなく、家族生活にもさまざまな影響が及ぼされます。家族が動揺すると、患者さんの気持ちも不安定になる等、家族を支援することは、患者さんの回復にも大きな影響を与えます。
私の役割は、患者さんがより安心して治療や療養生活を送れるよう、患者さんだけでなく、家族全体を援助の対象とし、個々の家族の思い、大切にしている価値観を理解、尊重し、家族の健康に結びつく方法を家族と共に考え、支援することです。患者を含む家族の力を信じて寄り添うことを大切にしながら病棟、外来、地域と連携した家族支援ができることを目指し活動をしていきたいと思っています。 私たち看護職は、以前から患者の回復に欠かせない家族への援助を重視してきましたが、自信をもって家族支援を実践していると言える方は少ないかもしれません。当院で是非、私と一緒に「患者さんと家族をどう支えていくか」、「家族の本来持っている力を引き出し強化するための支援とはなにか」等、看護師だからこそできる支援について、一緒に考えてみませんか。

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