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  1. もやもや病とは?

    もやもや病は日本で発見された病気で、現在でも東アジアからの報告が多い疾患です。そのため、世界でも”moyamoya disease”と呼ばれています。
    脳を栄養する動脈は、左右の内頸動脈、左右の椎骨動脈の合計4本ありますが、その内の左右の内頸動脈の末端が徐々につまっていく、原因不明で進行性の病気です。 脳を栄養する血流が不足するために脳梗塞を起こしたり、不足した血流を補うために新しく発生した細い動脈(この細い血管が脳血管撮影という検査で煙がもやもやしているように 見えたため、もやもや病の名前がつきました)が破れて脳出血を起こしたりします。脳梗塞、脳出血を起こし、治療は困難で、徐々に状態が悪化していくため、 特定疾患(難病)に指定されています。

  2. もやもや病の診断
    もやもや病はやや女性に多い病気で、約10%に家族内発症(特に兄弟に多い)が認められます。もやもや病は、小児発症(5歳前後がピーク)と成人発症(30~40歳代が ピーク)とで症状の出方が異なります。
    小児発症では、一過性に脳血流が不足することによって、片側の手足の麻痺や言葉の出にくさが出現する、一過性脳虚血発作が 多いと言われています。過換気の状態が症状を誘発するとされ、典型的には「ラーメンを息でさまそうとした時」や「笛を吹いている時」などが挙げられます。痙攣発作を起こすこともあり、 特に1歳や2歳の小さい子供では診断がなかなかつかないこともあります。
    成人発症では、すでに発生したもやもや血管が破綻することによる脳出血が多いと言われています。 突然の激しい頭痛、嘔吐や手足の麻痺などで発症します。
    小児発症、成人発症ともに頭部MRI、MRAを行うことにより診断できます。 最終的な確定診断には脳血管撮影(検査入院となります)が必要です。

  3. もやもや病に対する治療

    もやもや病の根本的な治療法はありません。内頸動脈がつまっていく原因は分かっておらず、これを防ぐことはできません。 それに代わり、手術(血行再建術)で脳への血流を増やすことによって、脳梗塞を防いだり、もやもや血管を減少させることによって脳出血を防いだりすることができます。 以前は、手術を行わず、内服薬(抗血小板剤など)のみで治療をする病院もありましたが、現在では早期に血行再建術を行うことで、もやもや病の予後が改善されることが分かってきました。
    当院では、以前から積極的にもやもや病に対する血行再建術を行ってきました。血行再建術の具体的な方法ですが、もやもや病では外頸動脈は全く侵されないので、 外頸動脈の枝である頭部の皮膚や筋肉にある動脈を脳の動脈につないで、脳の血流を増やします。頭部の皮膚にある浅側頭動脈を脳の表面にある中大脳動脈に 直接つなぐ方法(直接吻合術、浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術)と頭部の皮下組織や筋肉を脳に接着させて血流を増加させる方法(間接吻合術)があります。
    当院では、直接吻合術と間接吻合術を組み合わせた独自の手術法を開発しており、大脳全体の血流を増加させることができます(図1、2)。 病院によっては、直接吻合だけであったり、小さい範囲のみ手術をしたりすることがありますが、もやもや病は大脳半球の血流が広範囲に低下する病気ですので、 当院での方法が優れていると考えています。
     
    図1 ↑ クリックすると拡大表示

    図2 ↑ クリックすると拡大表示

    図1:①は直接吻合、②③④は間接吻合。前頭葉、側頭葉だけでなく必要があれば後頭葉の血流も増加させることができる (第34回日本脳卒中学会「もやもや病に対する広範囲前頭部皮下骨膜弁を用いた血行再建術の有用性」より)
    図2:手術前および手術後の脳血管撮影。手術後には脳への血流が増加し、もやもや血管は減少している

  4. もやもや病の予後

    もやもや病の長期予後に関しては、さまざまな報告がありますが、大規模な症例数を集めた報告はいまだにありません。しかし、脳梗塞や一過性脳虚血発作で発症した場合は、手術によってその後の脳梗塞の再発を防ぎ、予後を改善させることができると一般的に考えられています。一方、脳出血で発症した場合に、手術でその後の状態を改善できるかどうかについては、現在、日本で全国的な規模の研究がされています。
    当院では、以前より虚血発症(脳梗塞や一過性脳虚血発作で発症)に対しても、出血発症に対しても積極的に血行再建術を行ってきました。小児発症のもやもや病については、当院で初回の血行再建術を行い、術後5年以上経過観察した症例をまとめて報告しています(図3)。それによると、30例中27例(90%)で術後は全く後遺症なく生活できていました。残りの3例中1例は大きな脳出血で発症した症例で、他の2例は、他の病院で手術を行わずに長期に経過観察されてしまっていた症例でした。このことからも、もやもや病と診断された場合は早期に適切な手術が必要と考えます。

    図3

    図3 小児期(15歳以下)に発症し、当院にて血行再建術を行った後、5年以上が経過した30例の予後
    (第37回日本小児神経外科学会「小児期発症のもやもや病に対する血行再建術後の長期成績」より)
    ※ADL:日常生活動作








  5. 当院での治療方針

    もやもや病を疑う症状が出ている方、他の病院でもやもや病と診断された方は、当院脳神経外科外来を受診してください。 もやもや病を専門としている脳神経外科医が診察します。もやもや病と診断された場合、手術を計画していきます。 小児に対しても積極的に手術をしており、1歳から手術をしています。
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