当院について

もやもや病専門外来

もやもや病専門外来

2016年8月より、もやもや病専門外来(毎週火曜日午後、担当医:高須俊太郎)を開設しました。もやもや病と診断された患者さんや、もやもや病の疑いがある患者さんは、当院予約センターで予約を取得することができます(平日の午前9時~午後4時、電話052-832-1489)。他の病院で、すでにいろいろな検査を受けられている患者さんは、現在の主治医の先生の紹介状と資料を持参していただくようにお願いいたします。
当院では、1999年より鈴木善男先生が中心となって、もやもや病に対する治療を行ってきました。発症早期より積極的な手術(血管吻合術)を行うことによって、知能予後を含めた長期的な予後を改善できることを示してきました。豊富な治療経験を基に(表1)、もやもや病の患者さんが安心して治療を受けられるように、最善を尽くします。

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表1 当院におけるもやもや病に対する手術件数の推移

1.もやもや病とは?

もやもや病とは、脳を栄養する血管(内頚動脈)が徐々に細くなり、最終的にはつまってしまう病気です。日本を始めとした東アジアに多い病気です。内頚動脈が前大脳動脈と中大脳動脈に別れる部分(内頚動脈終末部)が細くなっていくのが特徴で、不足した血流を補うために新しく細い動脈(この細い血管が脳血管撮影という検査で煙がもやもやしているように見えたため、もやもや病の名前がつきました)が発達していきます(図1)。
内頚動脈が細くなると、脳を栄養する血流が不足するため、脳梗塞や一過性脳虚血性発作を起こします。また、新しく発達した細い動脈は非常に脆いので、血管が破れて脳出血を起こすこともあります。

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図1 正常な内頚動脈(左)と もやもや病の内頚動脈(右)

もやもや病はやや女性に多い病気で、約10%に家族内発症(特に兄弟に多いと言われています)が認められます。もやもや病は、小児発症(6歳前後がピーク)と成人発症(40歳前後がピーク)とで症状の出方が異なります。
小児発症では、一過性に脳血流が不足することによって、片側の手足の麻痺や言葉の出にくさが出現する、一過性脳虚血発作が多いと言われています。過換気の状態が症状を誘発するとされ、典型的には「ラーメンを息でさまそうとした時」や「笛を吹いている時」などが挙げられます。痙攣発作を起こすこともあり、特に1歳や2歳の小さい子供では診断がなかなかつかないこともあります。
成人発症では、すでに発生したもやもや血管が破綻することによる脳出血が多いと言われています。突然の激しい頭痛、嘔吐や手足の麻痺などで発症します。

2.もやもや病に対する手術

もやもや病の根本的な治療法はありません。内頚動脈がつまっていく原因は分かっておらず、これを防ぐことはできません。それに代わり、手術(血行再建術)で脳への血流を増やすことによって(図2)、脳梗塞を防いだり、もやもや血管を減少させることによって脳出血を防いだりすることができます。症状が出現していて、検査で脳血流が低下している場合は、手術が必要です。一方、症状がなかったり、脳の血流が正常であったりする場合は手術の必要ありません。症状が出ている場合、早期に血行再建術を行うことで、もやもや病の予後が改善されることが分かってきました。

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図2 脳血流シンチの術前と左血行再建術後の比較 左側の血流が改善している(赤、ピンクの部分の血流が高い)

手術には、直接吻合術と間接吻合術があり、病院によって手術方法は異なります。
直接吻合術は頭皮にある血管(浅側頭動脈)を脳の表面の血管(中大脳動脈)に直接つないで、血流を増やす方法です。脳の表面の血管は1mm程度の細い血管なので、顕微鏡を用いて非常に細い糸(太さ0.02mm)で縫い付けます(図3)。血流を手術直後から増やすことができますが、過灌流症候群(一時的に血流が流れすぎてしまうことにより、一過性に症状が悪化すること)という合併症があります。
間接吻合術後、頭部の皮下組織や筋肉を脳の表面に接着させて血流を増加する方法です。血流が増えるまでに時間がかかることが問題になります。

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図3 直接吻合術の術中写真(右)。浅側頭動脈と中大脳動脈を縫合している。縫合後、蛍光血管撮影(左)を行い、縫合した血管が流れていることを確認する。

3.当院でのもやもや病に対する治療

当院では、積極的にもやもや病に対する血行再建術を行ってきました。現在の当院での手術方法は、直接吻合術と間接吻合術を組み合わせた方法です(図4)。直接吻合術と間接吻合術を同時に行うことによって、お互いの欠点を補うことができます。
また、患者さんごとの血流低下の部位を考慮し、間接吻合術を行う部位を決定することによって、患者さん一人ひとりに合った最適な手術方法を選択することができます(テーラーメイド手術)。

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図4 当院での血行再建術の方法。直接吻合術と間接吻合術を組み合わせて行う。

4.もやもや病の予後と今後の展望

脳梗塞や一過性脳虚血発作で発症(虚血発症)したもやもや病については、手術を行って脳の血流を増やすことで、脳梗塞を防ぎ、一過性脳虚血発作をなくすことができます。小児発症のもやもや病に対して当院で初回の血行再建術を行い、術後10年以上経過観察した症例をまとめて学会で報告していますが、8割以上の患者さんが問題なく日常生活を送っています。障害が残った患者さんは、手術前に重度の脳梗塞を発症していた症例や他の病院で手術を行わずに長期に経過観察されてしまっていた症例でした。このことからも、もやもや病と診断された場合は早期に適切な手術が必要と考えます。
脳出血で発症したもやもや病についても、日本で全国規模の研究が行われ(JAM trial)、手術を行ったほうが再出血を防げることが証明されました。
現在、もやもや病の原因を探るべく、遺伝子レベルの研究が全国で行われており、もやもや病感受性遺伝子(RNF213)が発見されています。当院でも名古屋大学脳神経外科と協力し、病因の究明を目指しています。

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