当院について

胃がんに対する低侵襲手術

当院では、粘膜に限局する早期胃がんに対しては、本邦の胃がん治療ガイドラインで推奨されているようにESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)と呼ばれる胃カメラによる内視鏡的切除を消化器内科で行っています。これらの治療は、胃の粘膜・粘膜下層を削り取る治療であるため、胃の形態は保たれる体に優しい治療といえます。当院では年間70例弱の内視鏡的切除を行っています(図1)。一般消化器外科では、内視鏡的切除の適応にならない患者さんに対して、外科手術を行っています。実際、年間約100例強の胃切除手術を実施しています(図2)。愛知県内の病院の胃がん手術件数としては、6番目に多い結果でした(週刊朝日MOOK 手術数でわかるいい病院2012ランキングより)。


図 1iganshujutsu-01

図 2iganshujutsu-02

2004年までは開腹手術のみを行っていましたが、体に負担の少ない手術として2005年からは小開腹手術を、さらに2006年からは腹腔鏡手術を導入開始しました(図3)。当初は、早期胃がんに限定した手術として行っていましたが、従来の開腹手術と同等の安定した手術成績を収めていることから(図4)、最近では徐々に適応を拡大しています。また、高齢者や、心臓、肺、糖尿病、腎不全など合併症を有する患者様においても、全身麻酔が安全に実施できると判断されれば、積極的に実施しています。その結果として、2013年には腹腔鏡手術の割合が初めて50%を超えました (図3)。以下に、小開腹手術、腹腔鏡手術の説明を行います。


図 3
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図 4
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小開腹胃手術

通常の手術では15~20cmほど開腹して行うのに対して小開腹胃手術では4~5cmの小さなきずで行います(図5)。通常の手術ではおなかのなかに術者の手を入れて手術操作を行うのに対し、小開腹手術では筋鉤や摂子などの器具のみをお腹の中にいれて手術を行います(図6)。きずが小さいのみでなく、腹腔内臓器に触れることが少ない分これらの臓器への影響も少ないと考えられます。当科では2013年12月までに198例に小開腹胃手術を行ってきました。 小開腹胃手術の利点としては整容性に優れるのみならず、傷の痛みが少なく、また術後の体力の回復が通常手術に比べて早いことがわかってきました。短所としてはどんな患者さんに対しても可能というわけではなく、体格の大きい方、内臓脂肪の多い方では困難な場合もあります。


図 5
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図 6
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腹腔鏡下胃手術

腹腔鏡下胃手術ではへそに2cm程度の切開を加えて、カメラ(腹腔鏡)を挿入して、腹腔内の様子をテレビモニターに映し出します。その後、左右の腹部に5mm~1cm程度のきずをあけ、そこから鉗子や超音波メスなどを入れて、腹腔内で手術を行うものです(図7)。
切除した胃は主にへそのきずを3cmほどに延長し取り出します (図8) 。当科では2013年12月までに186例に腹腔鏡下胃手術を行ってきました。


図 7
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図 8
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一般的に腹腔鏡下手術の長所として、傷が小さく痛みが少ない、術後の体力の回復が早いことなどが挙げられていますが、当院では、最新の手術器具及びハイビジョンカメラでの鮮明な画像で手術を行うことで、安全性のみならずより精密で繊細な手術を心がけています(図9)。
順調であれば、手術翌日から飲水開始、歩行が可能となり、術後3日目には、おもゆが始まります。1-2日ごとに3部粥、5部粥、7部粥、全粥に変更となり、通常10日から14日程度の入院で退院となります(図10)。


図 9
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図 10
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短所としては開腹手術に比べ器具の扱いなどに関して高度の技術が必要であり、外科医に腹腔鏡下手術のための特別なトレーニングが必要であることです。但し、我々の施設では、大腸がん、胆石症、虫垂炎などの手術を加えると、年間400例以上の腹腔鏡手術を積極的に実施しており、腹腔鏡手術に習熟できる環境にあると言えます。

高度進行胃がんに対する治療

図11は当院で2001年1月から2007年5月までの期間で胃がん手術を受けられた患者さんのステージ(がんの進行度)別の生存曲線と5年生存率を表しています。残念ながら全ての胃がんを外科手術のみで根絶できません。なかでも、すでに肝臓や腹膜など遠隔転移が出現しているステージ IVの患者さんには、ガイドライン上も胃切除手術の有効性が証明されていないのが現状です。
当院では一般消化器外科、消化器内科や薬物療法科の医師が互いに連携を取りあい、Stage II-IIIの患者さんには、手術を行った上で、がんの再発を予防するための抗がん剤治療を行っています。また、ステージ IVの患者さんや手術後に再発が確認された患者さんに対しては、がんの進行をくい止めるための抗がん剤治療(TS-1、シスプラチン、ゼローダ、タキソール、タキソテール、トポテシンなど)、分子標的治療(ハーセプチン)を行っています。


図 11
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最後に

当科で行う手術や抗がん剤治療などを含むすべての治療は、患者さんやそのご家族との説明を十分にさせていただき、同意がいただけた治療を行っています。そのため、患者さまの体力、年齢、社会的背景、ご希望などを十分お聞きした上で、もっとも納得していただける形での治療方法を患者さんやそのご家族と一緒に選択させていただきます。不明な点などがあれば、お気軽にいつでも当科の医師、看護師、メディカルスタッフなどに相談していただける環境づくりにも努めています。

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