当院について

もやもや病専門外来

もやもや病専門外来

当院では、もやもや病専門外来(毎週火曜日午後、担当医:高須俊太郎)を開設しています。もやもや病と診断された患者さんや、もやもや病の疑いがある患者さんは、当院予約センターで予約を取得することができます(平日の午前9時~午後4時、電話052-832-1489)。他の病院で、すでにいろいろな検査を受けられている患者さんは、現在の主治医の先生の紹介状と画像などの資料を持参していただくようにお願いいたします。
当院では、1999年より鈴木善男先生が中心となって、もやもや病に対する治療を行ってきました。発症早期より積極的な手術(血管吻合術)を行うことによって、知能予後を含めた長期的な予後を改善できることを示してきました。豊富な治療経験を基に(表1)、もやもや病の患者さんが安心して治療を受けられるように、最善を尽くします。

表1 当院におけるもやもや病に対する手術件数の推移

1.もやもや病とは?

もやもや病とは、脳を栄養する太い血管(内頚動脈)が徐々に細くなり、最終的にはつまってしまう病気です。日本を始めとした東アジアに多い病気です。内頚動脈が前大脳動脈と中大脳動脈に別れる部分(内頚動脈終末部)が細くなっていくのが特徴で、不足した血流を補うために新しく細い動脈(この細い血管が脳血管撮影という検査で煙がもやもやしているように見えたため、もやもや病の名前がつきました)が発達していきます(図1)。
内頚動脈が細くなると、脳を栄養する血流が不足するため、脳梗塞や一過性脳虚血発作を起こします。また、新しく発達した細い動脈は非常に脆いので、血管が破れて脳出血を起こすこともあります。

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図1 正常な内頚動脈(左)と もやもや病の内頚動脈(右)

 

もやもや病はやや女性に多い病気で、約10%に家族内発症(特に兄弟に多いと言われています)が認められます。もやもや病は、小児発症(6歳前後に多い)と成人発症(40歳前後に多い)とで症状の出方が異なります。
小児発症では、一過性脳虚血発作で発症することが多いと言われています(図2)。一時的に脳血流が不足することによって、片側の手足の麻痺や言葉の出にくさが出現する発作です。過換気の状態が症状を誘発するとされ、典型的には「ラーメンを息でさまそうとした時」や「笛を吹いている時」などが挙げられますが、他に激しく泣いた後に起こることもあります。痙攣発作で発症する場合もあり、特に1歳や2歳の小さい子供では診断がなかなかつかないことがあります。
成人発症では、脳出血で発症する場合と、脳梗塞や一過性脳虚血発作で発症する場合が、半分ずつと言われています。脳出血は、脳の血流を補うために発達した「もやもや血管」が破れることによって起こります(図2)。突然の激しい頭痛、嘔吐や手足の麻痺などで発症します。重症例では生命に危険が及ぶこともあります。

図2 もやもや病で起こる一過性脳虚血発作(左)と脳出血(右)

2.もやもや病に対する治療

内頚動脈がつまっていく原因は分かっておらず、これを防ぐことはできません。それに代わり、手術(血行再建術)で脳への血流を増やすことによって(図3)、脳梗塞を防いだり、もやもや血管を減少させることによって脳出血を防いだりすることができます。症状が出現していて、検査で脳血流が低下している場合は、手術が必要です。一方、症状がなかったり、脳の血流が正常であったりする場合は手術の必要ありません。症状が出ている場合は、早期に血行再建術を行うことで、症状を改善し、長期的な予後も改善することができます。

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図3 脳血流シンチの術前と左血行再建術後の比較 左側の血流が改善している(赤、ピンクの部分の血流が高い)

 

手術には、直接吻合術と間接吻合術があります。
直接吻合術は頭皮にある血管(浅側頭動脈)を脳の表面の血管(中大脳動脈)に直接つないで、血流を増やす方法です。脳の表面の血管は1mm程度の細い血管なので、顕微鏡を用いて非常に細い糸(太さ0.02mm)で縫い付けます(図4)。血流を手術直後から増やすことができますが、過灌流症候群(一時的に血流が流れすぎてしまうことにより、一過性に症状が悪化すること)という合併症があります。
間接吻合術は、頭部の皮下組織や筋肉を脳の表面に接着させて血流を増加させる方法です。広範囲の脳の血流を改善することができますが、血流が増えるまでに1-3ヶ月かかることが問題になります。
それぞれの欠点を補うために、両方の手術を組み合わせた複合式血行再建術という方法があります。当院では以前よりこの方法で手術を行っています。

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図4 直接吻合術の術中写真(左) 浅側頭動脈と中大脳動脈を縫合後、蛍光血管撮影(右)を行い、縫合した血管が流れていることを確認する

3.当院でのもやもや病に対する治療

当院では、積極的にもやもや病に対する血行再建術を行ってきました。当院での手術方法は、直接吻合術と間接吻合術を組み合わせた複合式血行再建術です(図5)。直接吻合術と間接吻合術を同時に行うことによって、お互いの欠点を補うことができます。また、患者さんごとの血流低下の部位を考慮し、間接吻合術を行う部位を決定することによって、患者さん一人ひとりに合った最適な手術方法を選択することができます(テーラーメイド手術)。
現在では、手術の際の髪の毛も可能な限り残すようにしています。女性で髪の長い方は、退院時には手術の創がほとんど目立たない方も見えます(図6)。

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図5 当院での手術方法 直接吻合術と間接吻合術を組み合わせた複合式血行再建術

図6 手術後11日目の写真 髪の毛を下ろすと手術創は目立たない

4.もやもや病の予後と今後の展望

脳梗塞や一過性脳虚血発作で発症したもやもや病については、手術を行って脳の血流を増やすことで、脳梗塞を防ぎ、一過性脳虚血発作をなくすことができます。また、脳出血で発症したもやもや病に対しても、手術を行うことで再出血の危険性を減らすことができます。もやもや病に対して当院で初回の血行再建術を行い、術後10年以上経過観察した症例の長期成績をまとめると、脳卒中の再発を認めたのは、小児例では4%、成人例では6%のみでした。
もやもや病に対して手術を行った女性の患者さんで、妊娠、出産する方も増えてきました。もやもや病患者さんが安心して妊娠、出産ができるように、当院では産婦人科、神経内科、小児科と協力して2017年4月に「周産期脳卒中センター」を立ち上げました。
現在、もやもや病の原因を探るべく、遺伝子レベルの研究が全国で行われており、もやもや病感受性遺伝子(RNF213)が発見されています。当院でも名古屋大学脳神経外科と協力し、病因の究明を目指しています。

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