
当院では、脳動脈瘤専門外来(第2、第4木曜日午後、担当医:関行雄、新帯一憲)を開設しています。脳動脈瘤の治療を希望される患者さんは、当院予約センターにお問い合わせください。
脳動脈瘤に対しては、外科的治療(開頭クリッピング術)と血管内治療(脳動脈瘤コイル塞栓術)の2つの治療法があり、脳動脈の形・大きさ・場所や患者さんの状態などによって治療法を選択します。
当院の脳動脈瘤専門外来の特色は、脳動脈瘤に対する治療法について外科的治療(開頭クリッピング術)を専門としている医師と、血管内治療(コイル塞栓術)を専門としている医師の双方からそれぞれの治療の良い点、注意しなければならない点について説明を受けることができ、患者さん個人にとって最適な治療方法を選択できることです(ペイシェント・ファースト)。患者さんと私達とで相談しながら、最も良い解決方法を一緒に探しましょう。
脳動脈瘤とは、脳の動脈の一部が「瘤(こぶ)」のように膨らんだ状態のことを言います。
動脈が枝分かれしている部分にできることが多く、そこに血流による負荷が加わることで生じると考えられています。また、疫学調査により、年齢や性別、高血圧、喫煙、飲酒、遺伝的要因などが発生、増大に影響していることもわかってきています。
脳動脈瘤は将来的に破裂する可能性があり、破裂していない状態を「未破裂脳動脈瘤」と言います。未破裂の状態では自覚症状はほとんどなく、脳ドックや頭痛、めまいの精密検査として行われるMRI検査で偶然発見されることが多い病気です。
一方、脳動脈瘤が破裂し出血した状態が「くも膜下出血」という病気です。くも膜下出血を発症すると、実に3人に1人は寝たきりか亡くなり、1人は何らかの後遺症を患い、問題なく社会復帰できる人は1人とされている恐ろしい病気です。くも膜下出血の症状は、典型的には「突然の人生最大の激しい頭痛」とされますが、吐いたり、気を失ってしまったり、そのまま亡くなられてしまう人もいます。
未破裂脳動脈瘤と診断された場合には、早めに破裂予防の治療を受けていただくことが望ましいか否かを専門医が判断することになりますが、一般的に以下の項目に当てはまる患者さんには予防的治療が勧められます。
破裂の危険性が低い場合には、十分に説明をお聞きいただいた上で、まずは手術ではなく定期的に画像検査(MRIや造影CT)を行い、脳動脈瘤の大きさや形に変化が生じないかを確認していくという方法を取ることもあります。
脳動脈瘤の治療は手術となります。手術方法には、外科的治療(開頭クリッピング術)と血管内治療(脳動脈瘤コイル塞栓術)の2種類があります。
開頭クリッピング術は頭の皮膚を切って、一部頭蓋骨を外し、顕微鏡下に脳のすき間を分け入って脳動脈瘤に到達し、チタン製のクリップで瘤の根元をはさみ、瘤の中に血液が入らないようにすることで破裂を防ぐ方法です。
<開頭クリッピング術の例>
一方、脳動脈瘤コイル塞栓術は、血管撮影室で足の付け根や腕の動脈から脳の中の血管までカテーテルを通し、最終的に1mm程度の細いカテーテルを脳動脈瘤の中に進め、瘤の中に細く柔らかいプラチナ製のコイルを詰めて血液が入らないようにする方法です。
<脳動脈瘤コイル塞栓術の例>
それぞれの特徴は以下のようになります。
治療成績はほぼ同等ですが、患者さんの背景(ご年齢やこれまでの病気など)や脳動脈瘤の部位や形状により、それぞれの治療方法の経過や合併症が少しずつですが異なります。
当院では、合併症なく、より安全に治療を受けていただくために、この2種類の手術方法を患者さんごとにどちらがより適しているかを総合的に判断し、ご提案させていただいています。なお、どちらの手術方法でも治療可能な場合は、それぞれの手術方法についてご理解していただいた上で、患者さんの希望に沿った手術方法を選択することも可能です。
脳動脈瘤の中には、巨大な動脈瘤、血栓化動脈瘤(動脈瘤の内部に血の塊が出来てしまう動脈瘤)、紡錘状動脈瘤(血管自体が膨らんでいる動脈瘤)など、通常の開頭クリッピング術や血管内コイル塞栓術では治療できない動脈瘤があります。そのような動脈瘤に対しては、バイパス術とクリッピング術、コイル塞栓術などを組み合わせて治療を行うことがあります。当院ではバイパス術の症例数は非常に豊富であり、複雑な動脈瘤に対する治療も問題なく行うことが出来ます。
<バイパス術を併用した動脈瘤治療の例>
内頚動脈の巨大動脈瘤に対して、バイパス術を行った上で、内頚動脈をクリップでトラッピング(動脈瘤ができている血管ごと血流を止めること)した。
治療後に再発していないかどうか、他に脳動脈瘤が生じていないかどうかを、定期的に画像検査(MRIや造影CT)を行って確認していきます。