食道から直腸までの消化管、肝臓、胆嚢、膵臓、乳腺の疾患の外科的治療と、外傷,ヘルニアの治療を行います。総合病院の強みを生かし、各診療科の協力のもとに合併症の多い患者さんにもより安全に手術を行う事が出来ます。救急疾患に対しては若手医師と医師歴10年以上のベテラン医師がペアで待機していますので24時間対応可能です。
当院では低侵襲手術である腹腔鏡下手術に力をいれており、胆嚢摘出術の98%、大腸切除術の70%、胃切除術の50%に腹腔鏡下手術を行っています。その他、食道、肝臓、膵臓などの疾患にも適応例では腹腔鏡下手術を行っています。2018年以降はロボット支援下手術も積極的に導入しています。日本内視鏡外科学会技術認定医5名、ロボット手術有資格者7名を擁しています。
がん治療では日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医1名、日本がん治療認定医機構がん治療認定医2名を擁し、腫瘍内科,放射線科など各科協力の上集学的な治療を行い、定期的に関係各科の医師によるカンファレンス(Cancer Board)も開催しています。
当科が対応する患者さんの主な症状
・腹痛
・嘔吐
・腹部の局所的な膨隆
・腋窩や鼠径などの腫瘤
主な対応疾患とその標準的な治療法
胃がん
胃がん手術は全国的に減少傾向にはありますが、緊急手術が少ないこともあり低侵襲手術の割合が高く2024年では50%をロボット手術で,20%を腹腔鏡下手術で行っています。ロボット手術では腹腔鏡手術に比して複雑な操作が可能なことから、噴門側胃切除や幽門保存胃切除など,胃を極力温存する術式も多く取り入れています。
大腸がん
以前より大腸手術の7割を腹腔鏡手術で行っていましたが、2019年ロボット手術を導入し、2024年には大腸手術の30%をロボット手術で、45%を腹腔鏡下手術で行っています。開腹手術は穿孔症例や他臓器浸潤症例、高度癒着症例など25%の症例にとどまっています。ロボット手術は骨盤内の狭い視野でも精緻な操作が可能であり、下部直腸がんでの肛門温存や側方リンパ節郭清がより精密に行えます。
胆管結石症
通常、総胆管結石に対しては内視鏡的な胆管切石と腹腔鏡下胆嚢摘出術の二期的治療が一般的ですが、当院においては重篤な胆管炎のない症例では、十二指腸乳頭機能の温存のために腹腔鏡下に胆管結石摘出と胆嚢摘出術を一度に行う一期的手術を採用しています。これにより、入院期間を短縮し、より低侵襲な治療が可能となっています。
食道がん
2024年からは食道分野での内視鏡外科技術認定医1名が赴任した結果、胸腔鏡下食道手術が非常に増加し、良好な手術成績を得ています。
胃十二指腸潰瘍
穿孔(消化管に穴が開くこと)や出血(薬物療法で治らない場合)、狭窄などある場合は手術的に穿孔部閉鎖や胃切除などを行います。
小腸閉塞
緊急性のない場合はイレウス管治療(経鼻チューブを挿入して減圧し治療します)による非手術的な治療を試みます。上記で治癒しない場合、または緊急性のある場合は手術治療(癒着を剥離したり小腸部分切除を行います)を行います。状況に応じて腹腔鏡手術などの低侵襲治療を行います。
結腸憩室症
出血や狭窄などがある場合は手術治療(結腸切除など)を行います
虫垂炎
虫垂炎手術では腹腔鏡手術の増加に加えて待機的手術が増えています。虫垂周囲膿瘍を伴うような複雑性虫垂炎では以前は緊急開腹手術で回盲部切除などの高侵襲性手術になったり術後遺残膿瘍で長期入院になることも多かったのですが、最近ではまずは抗生剤にて炎症を抑え、2-3ヶ月後に待機的に腹腔鏡下虫垂切除を行う選択肢が増え、2024年では全体の半数近くが待機的手術を選択しています。
原発性肝がん
消化器外科では手術治療(肝切除)を行います。腹腔鏡下手術などの低侵襲治療も取り入れています。
転移性肝がん
手術治療(肝切除)、化学療法(抗がん剤、分子標的薬などによるお薬の治療)を組み合わせて集学的に治療を進めます。腹腔鏡下手術などの低侵襲治療も取り入れています。
膵がん、膵腫瘍
手術治療(膵切除)、化学療法(抗がん剤、分子標的薬などによるお薬の治療)を組み合わせて集学的に治療を行います。腹腔鏡下手術などの低侵襲治療も取り入れています。
鼠経ヘルニア
ヘルニア手術は主に局所麻酔下の前方アプローチを行いますが、2023年より術式をリヒテンシュタイン法(後壁を壊さないオンレイパッチ法)に変更したことにより、より侵襲が小さく短時間で手術が可能になりました。手術枠が増えたこともあって、手術の待機期間が大幅に短縮しています。また両側症例や再発症例などには腹腔鏡下修復術も導入しています。
| 顔写真 | 役職名 氏 名 |
資 格 取得年 |
主な専門領域 | 資 格 |
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副院長 第一一般消化器外科部長(兼) 医療技術部長(兼) 坂本 英至 |
昭和62年 | 消化器外科、乳腺外科、内視鏡外科、肝胆膵外科 | 日本外科学会指導医・外科専門医、日本消化器外科学会指導医・消化器外科専門医、日本消化器病学会指導医・専門医、日本臨床腫瘍学会指導医・がん薬物療法専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医、ロボット支援手術プロクター(胃)、日本肝胆膵外科学肝胆膵外科高度技能指導医、消化器がん外科治療認定医、医学博士 --- 名古屋大学医学部臨床准教授 |
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第二一般消化器外科部長 法水 信治 |
平成4年 | 消化器外科、内視鏡外科、肝胆膵外科 | 日本外科学会認定医・専門医・指導医、日本消化器外科学会指導医・専門医、消化器がん外科治療認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医・ロボット支援手術プロクター(直腸・結腸)認定医、医学博士 --- 名古屋大学医学部臨床講師 |
| 役職名 氏 名 |
資 格 取得年 |
主な専門領域 | 資 格 |
| 医長 亀井 桂太郎 |
昭和63年 | 乳腺外科・消化器外科 | 日本外科学会指導医・外科専門医・認定医、日本乳癌学会乳腺専門医・乳腺認定医、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会乳房再建用エキスパンダー/インプラント責任医師、検診マンモグラフィ読影認定医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法指導医・専門医、日本消化器外科学会指導医・認定登録医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本医師会認定産業医、医学博士 |
| 第一一般消化器外科副部長 尾辻 英彦 |
平成15年 | 消化器外科、肝胆膵外科 | 日本外科学会指導医・外科専門医、日本消化器外科学会指導医・消化器外科専門医、日本内視鏡外科学会技術認定医、難病指定医、医学博士 |
| 医長 三竹 泰弘 |
平成22年 | 外科一般 | 日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会指導医・消化器外科専門医・消化器がん外科治療認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医、日本肝胆膵外科学会評議員、医学博士 |
| 医長 長尾 拓哉 |
平成23年 | 外科一般 | 日本消化器外科学会消化器外科専門医・消化器がん外科治療認定医、日本外科学会外科専門医、日本内視鏡外科学会技術認定医(消化器・一般外科)、日本食道学会食道科認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本消化管学会胃腸科認定医、日本ロボット外科学会認定医(Robo-Doc Pilot 国内B級) |
| 医師 木下 千尋 |
平成29年 | 外科一般 | 日本外科学会外科専門医 |
| 医師 甲斐 巧也 |
平成30年 | 外科一般 | 日本外科学会外科専門医 |
| 常勤嘱託医師(専攻医) 篠原 涼 |
令和2年 | 外科一般 | |
| 常勤嘱託医師(専攻医) 山川 良介 |
令和2年 | 外科一般 |
当院では地域医療連携センターを中心としてがん地域連携パスを運用しています。地域の先生方からご紹介いただいた症例を当科で手術・治療したのちは、積極的に地域の先生方にお返しし、必要な検査のみを当院で行うようながん地域連携パスを適用し、地域の先生方と当院とで共同してfollowしていく体制が整っています。また年1回「八事消化器カンファレンス」を当院で開催し、ご紹介いただいた症例のなかから代表的な症例の経過をご報告したり、消化器疾患のトピックスの紹介を行ったりしています。