血液透析、腹膜透析、腎移植の腎代替療法の中で、もっとも理想的なCKD治療は腎移植です。本邦の透析医療は世界最高レベルですが、腎臓が悪くなった患者さんが長生きしようと考えたら、腎移植がまず選択できないか考える時代です。透析導入をせずに、腎不全状態からシャントも作成せずに移植をする先行的腎移植も増えています。本邦では腎移植の25%ですが、当院では50%を超えています。最近の免疫抑制薬の進歩により、選ばれたCKD患者さんのみが腎移植からメリットを受ける時代は終わりました。高齢で糖尿病があり、冠動脈疾患も合併しているようなリスクの高いCKD患者さんが、透析より長生きを求めて腎移植をする時代です。腎移植術とともに、術前評価や術後長期フォローのウェートが大きくなっており、移植チーム内に内科医が必要となってきています。2016年は全国トップであった移植数だけでなく、治療成績もトップレベルで、本邦の腎移植チームの理想モデルとなっています。移植術と周術期は移植外科、術前や術後は移植内科が窓口になって話を進めていきます。移植内科がCKD患者さんの最初の窓口である腎臓内科や透析内科と連携して、腎移植がもっと身近なものになるようにしています。
慢性腎不全と1型糖尿病に対する唯一の根治療法である腎移植と膵臓移植を行っています。腎移植は年間 100例前後行っており、全国で最も移植件数の多い施設のひとつです。 加えて、低体重児(体重10kg以下)・高齢 者(70歳以上)・ABO血液型不適合・抗ドナー抗体陽性・高度動脈硬化症・心疾患等の合併症を理由に他院で移植を断られた方でも、移植に習熟した外科医・内科医・レシピエント移植コーディネーター・看護師・薬剤師・検査技師・臨床心理士による充実したチーム医療を行うことによって安全な腎移植が可能です。移植後外来診療においては、適切な食事指導・服薬指導・計画的な検査を行うことによって、心血管系疾患・感染症の予防と悪性腫瘍の早期発見を行っています。当院の移植腎生着率は、術後合併症リスクの高い方の腎移植を含めても1年99%、10年88%と全国平均より良好な成績です。生体腎ドナーに対しては鏡視下手術(腹腔鏡)を行い、合併症のない低侵襲手術を行っています。
内分泌外科では、手術適応となる甲状腺疾患(甲状腺がん、甲状腺結節性病変、バセドウ病など)および 副甲状腺病変(原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)、主に腎臓病に合併する二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)を対象疾患としております。甲状腺乳頭がんは最近、頸動脈エコー、あるいは検診の際に偶発的に発見される症例が増加しております。吸引細胞診で高い確率で診断可能です。当科では1cm以下の乳頭がんでも原則的には手術を推奨しております。外来で、残存甲状腺に対するAblation内照射)が可能となりました。術中には神経刺激装置を用い反回神経の損傷を回避しております。整容的見地から内視鏡下甲状腺摘出術もおこなっております。透析患者さんに合併するSHPTに関しましては手術例が3000例を超え、世界でみても多い手術例と考えております。PHPT症例も増加しており、画像診断で確認した腫大腺のみ摘出し、術中PTHモニタリングで確認する低侵襲な手術を施行しております。
当科は日本内分泌外科学会の認定施設であり、専門医が在籍しております。
当科が対応する患者さんの主な症状
移植外科
・末期腎不全
・1型糖尿病
移植内科
・生体腎移植希望
・献腎移植希望
・腎移植後発熱
・腎移植後腎機能低下
・腎機能低下状態での妊娠出産希望
主な対応疾患とその標準的な治療法
移植外科
末期腎不全
血液透析・腹膜透析・腎移植(生体腎移植・献腎移植)
1型糖尿病
インスリン療法・膵島移植・膵臓移植
移植内科
透析導入前のCKD患者
先行的腎移植(透析導入をせずに腎移植を行ないます)
血液型が違う生体腎ドナー候補がいるCKD患者
血液型不適合腎移植(移植前後に準備をしながら生体腎移植を行ないます)
抗ドナー抗体陽性CKD患者
抗ドナー抗体陽性腎移植(移植前後に準備をしながら生体腎移植を行ないます)
高齢生体腎ドナー候補者と高齢CKD患者
高齢者間の生体腎移植(ドナー候補、レシピエント候補とともに年齢制限はありません)
冠動脈疾患合併CKD患者
冠動脈疾患合併腎移植(移植前に冠動脈治療をしていても、きちんと評価して腎移植を行ないます)
HIV陽性CKD患者
HIV陽性腎移植(HIV陽性CKD患者に対して薬剤を調整して腎移植を行ないます)
状糸球体硬化症からのCKD患者
巣状糸球体硬化症に対する腎移植(移植前後に準備をしながら腎移植を行ないます)
小児CKD患者
小児腎移植(小児科領域のCKD患者に対して腎移植を行ないます)
妊娠出産希望CKD患者
腎移植後妊娠出産(腎移植とともに、その後の不妊症外来も含めた妊娠出産のサポートをします)
腎移植後感染症
免疫抑制薬減量と感染症治療(抗菌薬を使用しながら、免疫抑制薬も調整します)
腎移植後拒絶反応
免疫抑制強化と血液浄化療法(拒絶反応のタイプとグレードに応じた治療を行います)
腎移植後再発腎炎
免疫抑制強化と血液浄化療法(再発した原疾患に応じた治療を行います)
移植腎機能悪化したCKD患者
複数回の腎移植(2回目、3回目の腎移植が可能です)
移植腎機能悪化したCKD患者
透析再導入(血液透析か腹膜透析を施行して、免疫抑制薬を調整します)
生体腎ドナー候補がいないCKD患者
献腎移植登録(登録後は、献腎移植まで1年毎の外来フォローを行ないます)
内分泌外科
甲状腺良性腫瘤
甲状腺葉切除(4cm以上、増大傾向、圧迫などの症状がある、がんが疑われるなどあれば切除します)
甲状腺がん
甲状腺およびリンパ節の切除(腫瘍の大きさやリンパ節転移の有無によって切除する範囲を決めます)
バセドウ病
甲状腺全摘術(薬物治療やアイソトープ治療が適応とならない場合)
橋本病
薬物療法(甲状腺が非常に大きく腫大し圧迫などの症状があるときは手術で摘出することがあります)
甲状腺悪性リンパ腫
化学療法(診断と治療をかねて切除することがあります)
原発性副甲状腺機能亢進症
腫大副甲状腺摘出術(遺伝性の場合はすべての副甲状腺を摘出します)
二次性副甲状腺機能亢進症
副甲状腺全摘術および前腕筋肉内自家移植術(すべての副甲状腺を摘出し、その一部を腕の筋肉内に移植します)
顔写真 | 役職名 氏 名 |
資 格 取得年 |
主な専門領域 | 資 格 |
副院長 第一移植外科部長(兼) 渡井 至彦 |
昭和62年 | 腎移植、腎血管外科、泌尿器科 | 医学博士、日本移植学会移植認定医、日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本臨床腎移植学会腎移植専門医、日本泌尿器学会/日本泌尿器内視鏡学会泌尿器腹腔鏡技術認定制度認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医、厚生労働省指定オンライン診療研修修了 | |
第二移植外科部長 鳴海 俊治 |
昭和61年 | 消化器外科(肝胆膵外科)、移植外科(肝、腎、膵) | 医学博士、日本外科学会認定医・専門医・指導医、日本消化器外科学会認定登録医・指導医・認定医、日本消化器病学会指導医・専門医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本移植学会認定医、消化器がん外科治療認定医、日本臨床腎移植学会腎移植専門医、日本医師会認定産業医、厚生労働省指定オンライン診療研修修了 | |
内分泌外科部長 一森 敏弘 |
平成1年 | 甲状腺・副甲状腺、透析、乳腺 | 日本外科学会指導医・専門医・認定医、日本内分泌外科学会専門医・内分泌外科指導医・評議員、日本甲状腺学会専門医、日本透析医学会指導医・透析専門医、日本乳癌学会専門医・乳腺指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、マンモグラフィ読影認定医、日本移植学会移植認定医、日本臨床腎移植学会腎移植専門医、日本乳房オンコプラスティックサージェリー学会乳房再建用エキスパンダー/インプラント責任医師 |
役職名 氏 名 |
資 格 取得年 |
主な専門領域 | 資 格 |
第一移植外科副部長 平光 高久 |
平成14年 | 外科 | 医学博士、日本外科学会外科指導医・専門医、検診マンモグラフィー読影認定医B評価、麻酔科標榜医、日本麻酔科学会認定医、日本臨床腎移植学会腎移植専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本消化器外科学会指導医・消化器外科専門医・消化器がん外科治療認定医、日本乳癌学会認定医、内分泌・甲状腺外科専門医、日本移植学会移植認定医、日本甲状腺学会専門医、日本内分泌外科学会内分泌外科指導医 |
第二移植外科副部長 岡田 学 |
平成19年 | 移植外科、内分泌外科 | 医学博士、日本外科学会外科指導医・専門医、日本臨床腎移植学会腎移植専門医・認定医、内分泌・甲状腺外科専門医、日本移植学会移植認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本甲状腺学会専門医、日本内分泌外科学会内分泌外科指導医・専門医 |
移植内科副部長 二村 健太 |
平成20年 | 腎臓内科、透析療法、血液浄化療法 | 日本臨床腎移植学会腎移植専門医、日本腎臓学会認定指導医・腎臓専門医、日本透析医学会指導医・透析専門医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、インフェクションコントロールドクター(ICD)、日本結核病学会結核・抗酸菌症認定医、日本移植学会移植認定医、日本腹膜透析医学会認定医、小児慢性特定疾病指定医、難病指定医 |
常勤嘱託医師(留学レジデント) 青木 太郎 |
平成25年 | 腎臓内科 | 日本内科学会認定内科医 |
常勤嘱託医師(留学レジデント) 西川 涼馬 |
平成25年 | 日本泌尿器科学会泌尿器科専門医、日本内視鏡外科学会技術認定医(泌尿器腹腔鏡)、日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会泌尿器腹腔鏡技術認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医 | |
医師 長谷川 雄基 |
平成28年 | 麻酔科標榜医、日本外科学会外科専門医 | |
常勤嘱託医師 児玉 卓也 |
平成27年 | 日本腎臓学会腎臓専門医、日本内科学会認定内科医、日本アフェレシス学会認定血漿交換療法専門医、日本急性血液浄化学会認定指導者 | |
医師 島本 侑樹 |
平成30年 | 日本内科学会内科専門医 | |
医師 姫野 智紀 |
平成30年 | 麻酔科標榜医、日本外科学会外科専門医、難病指定医、日本医師会認定産業医 | |
非常勤医師 小林 孝彰 |
昭和60年 | ||
非常勤嘱託医師 後藤 憲彦 |
平成7年 | ||
非常勤嘱託医師 辻田 誠 |
平成14年 |
2017年4月から開設した移植内科は、移植外科とともに腎移植に特化した専門性の高い診療を行っています。
透析患者さんやCKD4-5患者さんが生体腎移植を希望された時の窓口は、移植内科です。患者さんや家族から当院レシピエントコーディネーターへ直接電話をください。当院交換台へ連絡をいただければつながります。電話にて初診受診枠を予約します。
将来の妊娠出産を希望されている女性CKD患者に対する妊娠希望外来も開設しています。女性CKD患者さんの妊娠出産の可能性が大きくなるように、不妊症外来とも連携しています。
移植の話だけ聞きたいとの患者さんや家族の受診も受け付けています。お気軽にお電話ください。
透析患者で献腎移植希望患者さんは、医療スタッフから地域連携を通じて移植外来予約をお願いします。
紹介していただいた患者さんについては、移植手術だけでなく、長期の外来経過についてもきちんとご報告させていただきます。
移植外科は腎臓病総合医療センターにおいて腎臓内科・血液浄化部・小児腎臓科とともに腎不全医療の一旦を担い、腎移植と膵移植に特化した専門性の高い診療を行っています。スタッフの移植医になるまでのバックグランドは泌尿器科・肝胆膵外科・消化器外科・腎臓内科・循環器内科と様々で専門的診断・治療を迅速に患者さんに還元できることが当科の特徴です。また、医師・レシピエント移植コーディネーター・看護師・薬剤師・検査技師・臨床心理士によるカンファレンスを定期的に行いチーム医療で患者さんを丁寧に診察・治療します。
触診、検診、画像診断等で頚部腫瘤を検出されましたら、当科あるいは内分泌内科にご紹介ください。現在PHPTで自覚症状の著しい方はまれです。骨粗鬆症の治療に先立って必ず血清Ca、P値を測定ください。血液検査で高カルシウム血症、高PTH値、あるいは骨量が著しく低下している症例ではPHPTを疑いご紹介ください。甲状腺疾患、PHPTともに生命予後が良好です。術後のフォローアップをお願いする機会もあるかと思います。