当科では、急性心筋梗塞や不安定狭心症、重症不整脈、急性心不全などで生命に危険のある患者さんに、カテーテル治療を中心とした最新の高度医療を24時間365日提供できる体制を維持しています。急性冠症候群(急性心筋梗塞、不安定狭心症)では、病院到着から再灌流までの時間を90分以内に行えるようにしています。安定狭心症に対しては、至適薬物療法を基礎に置き、カテーテル治療、バイパス手術を組み合わせエビデンスに基づいた治療を行っています。そのために血管の狭窄度(見た目)ではなく、虚血(血液の循環不全)の有無を判定し治療方針を決めています。急性冠症候群、安定狭心症を含めた虚血性心疾患の患者さんを治療するにあたり、ガイドラインの推奨を尊重した上で、さらに患者さんの生涯をマネージメントできるようにテーラーメイドの治療(病気の重症度や年齢、体力、嗜好、人生観に合わせて薬物療法、カテーテル治療、バイパス治療の選択、組み合わせ、優先度、先行順序など)を考慮します。循環器内科、心臓血管外科と看護師、放射線技師、医用工学士、理学療法士、栄養士からなるハートチームで最適な治療を提供できるよう常に協力できる体制があります。心機能改善を目的とした虚血性心疾患、心不全に対する心臓リハビリも積極的に取り入れています。
心房細動などの薬剤抵抗性不整脈に対してはカテーテルアブレーション治療、左脚ブロックによる重症心不全に対しては心臓再同期療法(CRT)、高齢者の徐脈にはリードレスペースメーカ、致死的不整脈に対しては植え込み型除細動器(ICD、S-ICD)を行っています。心房中隔欠損症に対するカテーテル治療、ペースメーカ感染に対するレーザーリード抜去術も行っております。また抗凝固療法が不適(出血リスクが高い)心房細動の患者さんに対する脳梗塞予防として、経皮的左心耳閉鎖も中部地方でいち早く導入いたします。現在、大動脈弁狭窄症に対するバルーン治療は創部を切開することなく穿刺のみで行っております。将来は大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル的大動脈弁置換術も導入して参ります。
当科が対応する患者さんの主な症状
心房細動
動悸、息切れ、めまい、胸痛
心筋梗塞
胸痛、胸の締め付け感、歯の痛み、みぞおちの痛み、肩の痛み、冷や汗
心不全
息切れ、むくみ、息苦しさ、横になると苦しく、座ると改善
大動脈解離
胸痛、背部痛、冷や汗
肺塞栓
息切れ、失神、胸痛
洞不全症候群、房室ブロック
めまい、失神、息切れ
末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)
しばらく歩くと足がだるい、足の指が紫色、下肢冷感、下肢潰瘍、下肢壊疽
弁膜症
息切れ、胸痛、失神、むくみ
上室頻拍
動悸、いきぎれ、めまい、失神、胸痛
心室頻拍、心室細動
動悸、息切れ、めまい、失神、胸痛
心房中隔欠損症
息切れ、めまい
ペースメーカー感染
ペースメーカー挿入部の発赤・腫脹、ペースメーカー露出、発熱・悪寒
感染性心内膜炎
続く発熱、息切れ、むくみ
狭心症
動いたときの胸痛、胸の締め付け感、歯の痛み、みぞおちの痛み、肩の痛み
主な対応疾患とその標準的な治療法
心房細動
・抗凝固療法(脳梗塞の原因となる血栓ができるのを防ぐため、血液をさらさらにする治療を行います)
・脈拍数コントロール(脈拍を低下させる内服薬や貼り付け薬を使用します)
・抗不整脈薬(心房細動の再発を予防するお薬です)
心筋梗塞
・経皮的冠動脈形成・ステント留置術(カテーテルインターベンション)による早期再灌流治療
・抗血小板療法(血栓ができるのを防ぐため、血液をさらさらにする治療を行います)
・血管拡張薬(血管を拡げて心負荷を下げます。心臓の繊維化を抑えて心機能悪化や心拡大を予防する薬もあります)
・交感神経抑制薬(β−遮断薬心拡大の予防や心筋梗塞の再発を予防します)
・コレステロール降下薬(主にスタチンと呼ばれる薬が、動脈硬化の改善や心筋梗塞再発の抑制に効果があることが知られています)
・心臓リハビリ(有酸素運動・筋力トレーニングが、心筋梗塞の方の予後改善につながることが証明されています。)
心不全
・利尿薬(尿をたくさん出して、全身のむくみをとります)
・心不全治療薬として血管拡張剤、交感神経抑制薬(β−遮断薬)、利尿剤を使用します。心不全悪化を防いだり、心機能の改善を目指します。
・心臓リハビリ(有酸素運動・筋力トレーニングが心不全の悪化防止につながることが証明されています)
大動脈解離
・降圧薬(血圧や脈拍を下げます)
・鎮痛薬(痛みを軽減するお薬です)
・安静治療(急性期は安静にすることも大切です)
肺塞栓
・抗凝固療法(血栓ができるのを防ぐため、血液をさらさらにする治療を行います)
・血栓溶解療法(血栓を溶かします)
洞不全症候群、房室ブロック
・原因となる薬剤があれば中止します
・体外式ペースメーカー(右心室に一時的ペースメーカーをいれて脈を補助します)
・ペースメーカー(脈を補助する装置で、心臓にリード線を入れ、胸壁皮下に電池を植え込みます)
末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)
・抗血小板療法(血栓ができるのを防ぐため、血液をさらさらにする治療を行います)
・血管拡張薬(血管を広げる内服薬を使用します)
弁膜症
・利尿薬(尿をたくさん出して、全身のむくみをとります)
・抗心不全薬(降圧剤や利尿剤を使用して、心拡大の予防や心不全の増悪を予防することができます)
上室頻拍
・抗不整脈薬(上室頻拍の再発を予防するお薬です)
・カテーテルアブレーション(余分な回路を焼き切ります)
心室頻拍、心室細動
・抗不整脈薬(心室頻拍・心室細動の再発を予防するお薬を使用)
・電気的除細動(高電圧・低電流でリズムを整えます)
心房中隔欠損症
心不全合併の場合には心不全に準じた内服治療
ペースメーカー感染
抗菌薬療法(細菌を抑えたり、殺したりする点滴薬を使用します)
感染性心内膜炎
抗菌薬療法(細菌を抑えたり、殺したりする点滴薬を使用します)
狭心症
・抗血小板療法(血栓ができるのを防ぐため、血液をさらさらにする治療を行います)
・冠動脈拡張薬(血管を拡げて発作を予防します)
・交感神経抑制薬(β−遮断薬・狭心症の発作を軽減します)
・コレステロール降下薬(主にスタチンと呼ばれる薬が、動脈硬化の改善や心筋梗塞再発の抑制に効果があることが知られています。)
顔写真 | 役職名 氏 名 |
資 格 取得年 |
主な専門領域 | 資 格 |
副院長 循環器内科部長(兼) 吉田 幸彦 |
平成1年 | 難治性不整脈・心不全の非薬物療法 | 医学博士、日本循環器学会認定循環器専門医、日本不整脈心電学会認定不整脈専門医、植込み型除細動器(ICD)/ペーシングによる心不全治療(CRT)研修証、日本病院会医療安全管理者認定証、日本内科学会総合内科専門医・認定内科医 | |
第一循環器内科部長 鈴木 博彦 |
平成13年 | 不整脈・心不全の非薬物療法、植込型デバイス感染治療 | 医学博士、日本循環器学会認定循環器専門医、日本医師会認定産業医、日本プライマリ・ケア連合学会認定医・指導医、植込み型除細動器(ICD)/ペーシングによる心不全治療(CRT)研修証、日本不整脈心電学会不整脈専門医、日本内科学会総合内科専門医・認定内科医、JMECCインストラクター | |
第二循環器内科部長 小椋 康弘 |
平成13年 | 循環器内科、一般内科、虚血性心疾患、不整脈、心不全 | 医学博士、日本循環器学会認定循環器専門医、日本内科学会認定総合内科専門医・認定内科医、植込み型除細動器(ICD)/ペーシングによる心不全治療(CRT)研修証、日本不整脈心電学会不整脈専門医、日本心血管インターベンション治療学会認定医、JMECCインストラクター | |
第三循環器内科部長 吉田 路加 |
平成16年 | 内科、循環器内科、カテーテルインターベンション | 医学博士、日本内科学会認定医・総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医、日本心血管インターベンション治療学会認定医・心血管カテーテル治療専門医、日本脈管学会専門医、経カテーテル心臓弁治療関連学会協議会指導医・TAVI(TAVR)実施医、認定経皮的心房中隔欠損閉鎖術術者 |
役職名 氏 名 |
資 格 取得年 |
主な専門領域 | 資 格 |
第一循環器内科副部長 安藤 萌名美 |
平成20年 | 循環器一般 | 医学博士、日本循環器学会認定循環器専門医、日本内科学会指導医・総合内科専門医・認定内科医、日本不整脈心電学会認定不整脈専門医、植込み型除細動器(ICD)/ペーシングによる心不全治療(CRT)研修証、日本心臓リハビリテーション学会心臓リハビリテーション指導士、日本超音波医学会認定超音波専門医、日本医師会認定産業医、愛知県難病指定医 |
医長 平山 賢志 |
平成20年 | 循環器一般、虚血性心疾患 | 医学博士、日本内科学会総合内科専門医・認定内科医、日本心血管インターベンション治療学会認定医、日本循環器学会認定循環器専門医、経カテーテル的心臓弁治療関連学会協議会経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)認定実施医 |
医長 大石 英生 |
平成23年 | 心不全 | 医学博士、日本循環器学会認定循環器専門医、日本内科学会認定内科医 |
医長 渡邉 諒 |
平成23年 | 循環器内科、不整脈 | 日本内科学会認定内科医、日本循環器学会認定循環器専門医、名古屋市難病指定医 |
常勤嘱託医師(専攻医) 縄野 友明 |
平成31年 | 内科 | |
常勤嘱託医師(専攻医) 伊藤 俊輔 |
令和2年 | 循環器一般 | |
常勤嘱託医師(専攻医) 岩出 和馬 |
令和2年 | 循環器一般 | |
常勤嘱託医師(専攻医) 松本 大輝 |
令和2年 | 循環器一般 | |
常勤嘱託医師(専攻医) 真野 悠太郎 |
令和3年 | 循環器一般 | |
常勤嘱託医師(専攻医) 清水 雄介 |
令和4年 | 循環器一般 | |
非常勤嘱託医師 長谷川 和生 |
平成1年 | 心エコー | 日本循環器学会認定循環器専門医、日本内科学会認定総合内科専門医・認定内科医、日本超音波医学会指導医・専門医 |
非常勤嘱託医師 青山 豊 |
平成14年 | 虚血性心疾患、心不全、心臓リハビリ | 医学博士、日本循環器学会認定循環器専門医、日本内科学会認定総合内科専門医・認定内科医、日本心臓リハビリテーション学会認定心臓リハビリ指導士、日本禁煙学会認定禁煙指導医、日本医師会認定産業医 |
フルデジタル心血管撮影装置(2台)、冠動脈内超音波診断装置(IVUS)(3台)、ロータブレーター、ダイアモンドバック、定方向性粥腫切除カテーテル(DCA)、光干渉断層計(OCT)、冠動脈内心筋血流量予備比測定装置、高周波アブレーション装置、CRYOアブレーション装置、HOT balloonアブレーション装置、レーザーバルーンアブレーション装置、CARTOマッピングシステム、エキシマレーザー発生装置、心血管画像ネットワークシステム、経皮的補助循環用ポンプカテーテル(IMPELLA)(2台)、大動脈内バルンパンピング(IABP)、経皮的心肺補助装置(PCPS)、LDLコレステロール吸着器、心エコー、食道エコー、トレッドミル、ホルター心電計、携帯型24時間血圧測定装置、血管内皮機能測定装置(FMD)、脈波伝搬速度(PWV)測定装置、動脈硬化測定検査(CAVI)、CPX(Cardiopulmonary Exercise Training,心肺運動負荷試験)装置
循環器疾患は高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙等の危険因子が基礎にあり、動脈硬化の進行により心筋の虚血や変性が生じ、最終的には心不全から死に至る一連のものとして対処する必要があります。当科では循環器疾患を有する患者さんの健康寿命と生命予後の改善を目的とし、初発抑制、再発抑制のための至適薬(種類、用量)、治療方針を患者さん毎に設定します。その後当院にて必要な治療(心不全治療、抗凝固療法、カテーテル治療、ペースメーカ、心臓リハビリなど)を行い状態が安定した段階で地域の先生方に治療の継続をお願いしています。その後も状態が悪化した際には病診連携のもと、当院にて再度治療を引き受けます。心エコー、トレッドミル、冠動脈CT、心筋シンチ、血管内皮機能(FMD)、脈波伝搬速度(PWV)などの検査も可能ですのでお気軽にご紹介ください。