当院ではICU、NICUを含め全病棟に薬剤師を配置しています。1病棟に2~3名の専任薬剤師を登録しており、チーム制で病棟を担当しているため、相談・連携しながら業務を行うことができます。新人薬剤師は上級薬剤師と組むため、安心して病棟業務に従事できます。
病棟薬剤師は持参薬の鑑別業務、服薬指導(くすりの効果や飲み方、副作用について説明等の実施)や医師への処方提案など多岐にわたる業務を実施しています。これらを通じて医師等の負担軽減や、医療安全と薬物療法の向上に貢献しています。
ICUは医師・看護師・薬剤師はもちろん、臨床工学技士、理学療法士など多職種が活躍する病棟です。このチーム医療の中で薬剤師として貢献できるよう日々心がけています。
急性期の患者が入院する病棟であるという性質上、薬剤師は注射薬の投与量やその選択などを医師に提案・相談することになります。例えば患者さんが敗血性ショックで運ばれてきて、入院後すぐに抗菌薬の投与が必要な状態ではあるが腎機能が一時的に悪化しており薬剤の排泄能が低下しているとします。その場合、抗菌薬の投与量はただ減量するのではなく、一刻を争う状態であるという患者さんの状態を踏まえ、その排泄能で投与できる最大の投与量を検討し医師に提案します。さらにその後の検査値もしっかりとフォローし、腎機能改善が認められれば投与量の増量を再度医師と相談する、といったように臨機応変な対応を心がけています。また多数の薬剤を使用するため、配合変化を考慮し使用ルートの選択に関して提案することも大切な業務です。
NICUにいる患者さんは生まれたばかりの新生児がほとんどで、体がまだ未熟でたくさんのサポートを必要としています。そのような状況下で薬剤師は、新生児への薬剤の投与量について検討・提案することはもちろんですが、栄養コントロールも重要な業務の一つです。一例をあげると、腸管の癒着のためTPN(中心静脈栄養)からしか栄養を摂取できない患者さんがいました。長期でTPNを投与されている患者ではセレンという必須微量元素とエルカルニチンというビタミンが不足する恐れがあり、その患者さんも既に2週間程度TPNを継続しており、それらが不足していると考えられました。医師と相談しTPNの組成を変更してもらい、最終的に患者さんは無事に成長し退院していきました。
新生児は小児の中でも体内動態が特殊であるため、成人の治療とはまた異なった関わり方ができる点にやりがいを感じます。点滴がたくさんつながったお子さんの治療が終わり、大きく成長して退院していく姿をみるととても嬉しくなります。