臨床検査科

臨床検査科

Manager’s eye

病理検査課長 瀬古周子

誇り高きマイスターの仕事

病理検査の仕事は一見、地味な作業です。生検材料や、手術で摘出された臓器を、切り出し、容器に詰め、自動包埋機にセットし、翌日、パラフィンで包埋し、ミクロトームで薄切し(うすぎりではありません。ハクセツです)、スライドガラスに貼付し、各種の染色を駆使し、プレパラート(標本)を作製する。
1㎜にも満たない、小さな生検材料は、特に気を遣います。なぜなら、この小さな組織を取るのにも、患者さんは大きな痛みを伴っているからです。「取り直し」なんて、おいそれとは言えません。技師は、小さな組織を失くさないよう、濾紙に包んだり、スポンジで挟んだり、色をつけたり、細心の心配りを欠かしません。パラフィン包埋の時も、ピンセットの先にくっついた小さな組織片を、器用にパラフィンの中に埋めていきます。薄切の時に、組織が失くなってしまわないよう、大小ある組織片を、深さを考えながら埋めていきます。
ミクロトームでの薄切作業の際には、厚さ数ミクロンの切片が、エアコンの風に吹かれて、飛んで行ってしまうこともしばしば。薄くスライスされた切片を、割りばしの先にくっつけて、そっと水槽に浮かべます。最近では自動薄切装置なども開発されてはいますが、小さな生検材料は、機械では薄切することができません。技師が丁寧に面出しして、1㎜単位の組織も失くさず薄切できるのです。
切片に色をつける工程の染色は、技師の腕のみせどころ。特に、絶妙な色のコントラストで染め分けされた特殊染色の標本は、本当に美しいです。
どんなに高名な病理医でも、標本の出来が悪ければ、正しい診断をすることができません。病理技師は、病気の診断を左右する重要な責任を担っているのです。
地味で細かい作業の連続ではありますが、どの過程においても、病理技師は手を抜けません。病理医が正しく診断できるよう、神経を使い、技術を駆使するマイスター(職人)の集団なのです。
病理技師は病理医とともに働いています。私は、病理技師は病理医の片腕として、信頼関係を築けなくてはいけないと思っています。しかし、医師から信頼を得るのは、なかなか簡単なことではありません。病理医の期待を裏切らず、要望に応えつつ、こつこつと関係を築いていくしかありません。病理技師として十分な知識や技術を持っていなければなりません。病理医から、標本作製についての意見を求められることもありますから、自分の意思、信念を持って、意見できる技師でなくてはいけません。
常に新しい情報にもアンテナを張っていなくてはいけません。これからはがんゲノム医療の時代、最新の治験や、遺伝子検査の知識も必要です。
私は、これから臨床検査技師として働く方々には、病理検査の面白さ、奥の深さを理解していただきたいと思っています。地味な作業も多いですが、病理技師として、診断に直接、関わっているということに責任とやりがいを感じることができます。
自分の仕事に誇りを持った「マイスター」をめざしていただきたいと思います。

生体検査課長 近藤規明

管理者として心がけていること ~未来へ繋ぐ~

管理職(臨床検査科の課長として)の役割は、会社(病院)の目標に対して、組織(臨床検査科)のパフォーマンスを最大限に引き出し、達成することにあります。
そのため我々は日々の研鑽を欠かすことはできせません。

[能力を磨く]
知的労働の現場において我々に求められるのは以下に示す5つの能力だといわれています。
1.基礎的能力(知的集中力と知的持続力)
2.学歴的能力(論理的思考力と知識の習得力)
3.職業的能力(直観的判断力と知恵の体得力)
4.対人的能力(コミュニケーション力とホスピタリティ力)
5.組織的能力(マネジメント力とリーダーシップ力)
ここに挙げた能力のうち、「基礎的能力」や「学歴的能力」はAI時代の到来により、すでにAIが人間を代替しつつあります。したがってAIによって置き換わることができない「能力」を自分自身で磨いていかなければなりません。
「人間の心」や「顧客(患者)の心」を相手とした我々の仕事は、AI革命の時代にも淘汰されることのない能力、すなわち「職業的能力」「対人的能力」「組織的能力」が求められています。
中でも経験や体験を通じてしか掴むことができない「職業的能力」の「直観的判断力」は
スキルやノウハウ(技術)に加えてマインドやハート(心得・姿勢)を重視し、自分自身の「再教育」を行っていますが、今後組織内にも広く浸透していければと考えています。

[部下とのコミュニケーション]
1.関心を持って聴く
以前、部下に対して「好きなこと」や「取り組んでいること」を尋ねてみると、その部下は熱心に語り始めました。こうしたやりとりをきっかけに、その後の私とのコミュニケーションが活発になり、仕事のパフォーマンスも向上し、お互いが「いい距離感」となり、現場の抱える問題点や若い世代の指導法に関しても積極的に意見を言ってくれるようになりました。
また、役職者の業務にも少なからず関心を持つようになり、以前は全く興味を示さなかったマネジメントに関しても前向きな発言に変わってきました。
何気ない会話が部下の成長に繋がる“きっかけ”となるのではないでしょうか。
2.アクノレッジメント(承認)する
部下の取り組みに対して、進捗や変化、成果などを相手に伝えることを心がけています。
「自己成長感」は人の意欲や自発性を促すエネルギー源になり得るとされており、目標に向かって確実に進んでいる、進歩していることを相手に伝える「フィードバック」を重視しています。
また、アクノレッジメントとは異なりますが、「良い仕事」をした時は素直に「褒める」ことも相手の意欲をかき立てるには有効な方法と考えます。

“未来へ繋ぐ”
夢や志を語りながら人間関係力を磨き、そこに仲間が集い、組織力を向上させ、一体感のある集団、そんな組織づくりを目指しています。

微生物遺伝子検査課長 加藤敏治

時代が変わっても変わらないこと ~今の時世だからこそ大事にしたいこと~

管理職に求められる素養や能力は時代とともに変化しており、ますます高度な能力が求められるようになっていると感じます。求められる能力が変化していく中でも私が信念として大事にしていることは人への気遣い」です。出勤してきた部下の様子がいつもと違うなと感じたら「大丈夫?」と必ず声をかけるようにしています。部下だけでなく、検査室業務を支えてくれている事務スタッフ、清掃委託業者、外部委託業者の方々にも、何もなくてもできるだけ声をかけるようにしています。声をかけてみると、業務に関することだけでなく、趣味、家族のこと、悩み事、思いもよらぬ話が聞けることもあり、そこからさらに会話が広がることもあります。日常の声かけによってコミュニケーションがとりやすい関係を築いておくことが、仕事に活かされることを今まで多く経験しました。
元来、部下にとって上司は話しかけづらい存在だと思います。イスに座って待っているだけでは、部下の声はほとんど聞こえてこないでしょう。上司から声をかけていくことで初めて心理的に安全な上司に近づくことができるのではと考えています。

コロナ禍の影響があるのか、昨今、人はますます不寛容になったような気がします。他者批判や自己中心的な言動を見聞きすることも少なくありません。このような時代だからこそ、「人への気遣い」がこれまで以上に大事であると感じています。

微生物遺伝子検査課は新型コロナウイルスのPCR検査を担う部門であり、コロナ禍でスタッフの
肉体的・精神的負担は、これまで以上に増しています。そうした環境下で部下の負担が少しでも減り、チームのパフォーマンスを高めるためにも、私の信念である「人への気遣い」を忘れず、心理的に安全な上司であり続けたいと考えています。

成分分析課 血液検査係長 黒木聖久

スタッフが働きやすい環境・雰囲気を作り出す

係長は管理職としての職務遂行能力に加えて、専門家としての知識や技術が求められるポジションです。まして私は、50代の時に長い間配属されていたHLA検査から血液検査に異動になり知識や技術が浅いために自らも勉強する毎日です。そういったポジションにある私が大事にしていることは「スタッフが働きやすい環境・雰囲気づくり」です。私が管轄する血液検査係は、私を含めて5名のスタッフがいますが、私以外は全員が20代と30代であり、非常に若い職場です。彼らは学会や勉強会にも積極的に参加し、認定資格を取得するなど自己研鑽にも励んでいます。そういった職場環境において働きやすい環境・雰囲気を維持するために、「専門的知識の積極的な活用」、「権限移譲による係運営への参加」を意識しています。前者については認定資格を取得した技師に専門的知識を活用してもらうため、血液内科をはじめとする臨床医とのディスカッションに出来るだけ参加できるよう配慮しています。また、後者については、権限移譲できる業務については、どんどん若手スタッフに協力してもらい、係の運営に自分自身も貢献しているという気持ちをもってもらうようにしています。業務を任せることで私自身が考えもつかなかったような素晴らしい提案をしてくれることも少なくありません。質の担保された結果を臨床に報告する上で機器の整備、日々の精度管理も大変重要ですが、職場で働くスタッフの心身の健康も重要な要素であると考えています。「毎日、出勤してくることが楽しい職場を提供する」が私の管理職としての大きな目標です。

血液検査係のスタッフは日常業務が多忙な中であっても、採血室が混雑していれば率先して応援に向かったり、業務改善の提案を挙げてくれたりと非常に前向きな姿勢をみせてくれています。こうした姿勢は彼ら自身の資質によるところが大いにあると感じていますが、スタッフが前向きな気持ちで働けるような職場環境を維持できるようサポートしていきたいと考えています。

超音波診断課 超音波診断課長 石神弘子

治療への架け橋として

超音波診断課は2021年4月に課として立ち上がり、同年10月には、院内の超音波検査を集約し『超音波センター』を開設しました。

当院検査科では、それまでも年間1万件を超える心エコー検査を始め、経食道心エコー、頭頚部や四肢の血管エコー、乳腺、甲状腺、関節といった体表エコーを行っていました。現在は腹部エコーも含め、神経や甲状腺以外の頸部臓器なども超音波センター内で行っています。このようにエコーは全身の観察に用いられるようになっています。エコーだけではなく、CT、MRIといった他の画像モダリティーの進化も目覚ましいものがあります。その中でエコーはやはり検者の技術に依存するということが必ずデメリットとして挙げられます。

そのデメリットを出来るだけ少なくすれば、リアルタイム性や瞬時の血流情報などエコーでしか分からない情報も大変多く、エコーが患者さんにとって有益な検査になることは間違いありません。そのためには我々技師に任せてよかったと思ってもらえるレベルに到達し維持していくことが必要です。それには各自の継続した努力、学習も必要ですし、後輩を育てていくこと、教育することを技師全員が担わなければなりません。エコー検査に入り始めた多くの技師は先輩のように出来ないことに落ち込みます。その時に感じたもっと出来るようになりたい、もっと勉強しないといけないという気持ちをずっと持ち続けるこの向上心こそが最も大切な事だと思います。

エコー検査はその結果が直接、治療方針、方法の選択に繋がります。その責任を感じながら1例1例の検査に向き合うことが必要です。そのためにはエコーを担当する技師には、知識、技術そして態度が大切だと思っています。その3つが揃ってこそ、私たち技師が治療への架け橋となる検査が出来るようになると信じています。

超音波診断課のスタッフと一緒に日々勉強しながら、これからも治療への架け橋を沢山築いていきたいと思っています。

生体検査課 神経聴覚生理係長 北野直美

ふたつの大切にしていることと新たな気づき

私は生体検査室で神経聴覚生理係長として、脳波、聴覚、平衡機能検査などの管理を担当し、その他にも心臓や血管、甲状腺の超音波検査など、多くの検査に携わっています。私は患者さんと直接関わる仕事が好きで、大きなやりがいを感じながら働かせていただいています。ここでは日々の生体検査業務の中で、ふたつの大切にしていることと、新たな気づきについてお話ししたいと思います。

ひとつめの大切にしていることは、「検査についての丁寧な説明」です。患者さんは検査を受けるにあたり、さまざまな不安を抱えておられます。不安や緊張が検査に支障を来たすこともあります。私は「プレパレーション(心の準備)」という小児医療の概念を取り入れ、丁寧でわかりやすい検査説明を目指した活動を行っています。特に脳波検査では説明パンフレットの配布や小児病棟への出張説明などを行い、大きな効果を得ています。今後もスタッフを巻き込んで、「丁寧な説明」を増やしていきたいと思っています。

もうひとつの大切にしていることは、「リアルタイムで症状を把握すること」です。臨床検査技師の養成課程には、症状の聞き方を学ぶカリキュラムはありません。検査時に患者さんの状態をしっかり観察し、コミュニケーションを取りながら症状などを聞くことは、質の高い検査を行うためには必須の技術です。時には症状の悪化や発作状態のため緊急連絡が必要な場合もあります。私たちは最初に検査結果を知る医療従事者として、大きな責任があります。特に経験の浅い技師が症状を把握する力量の強化は今後の大きな課題です。

 

近年、急速な高齢化によって心不全、認知症、てんかん、動脈硬化などの患者さんが急増しており、検査依頼が増加傾向です。中でも脳波検査は少子高齢化と高齢発症てんかん、認知症の急増により、対象が子供から高齢者に変わってきました。また、高齢者のてんかん発作は症状が複雑でわかりづらい場合が多く、脳波検査の重要性が高まっているため、通常の脳波以外に医師による緊急簡易脳波検査も行っています。

このような中、長年幅広い業務に携わり、それぞれが独立した仕事のように感じていましたが、「高齢化」というキーワードによってひとつひとつが密接に関係していることに気がつきました。最近の研究では認知症とてんかんの関係について指摘されており、いろいろな仕事がどんどん繋がりつつあります。認知症の知識を深めるため、当院では今のところ唯一の「認定認知症領域検査技師」という資格も取得しました。

この気づきによって、以前は自身を広く浅いジェネラリストと感じていましたが、今後は認知症、てんかん、心疾患等の高齢化の総合的な知識を持った「幅広のスペシャリスト」を目指し、患者さんや仲間を大切にしながら、挑戦し続けていきたいと思っています。

 

病理検査課 病理検査第一係長 長田裕之

信頼されるリスクマネージャーを目指して

私が管理者として最も力を注いでいることはリスクマネジメントです。リスクマネジメントとは一般的に「リスクを組織的に管理(マネジメント)し、損失等の回避又は低減を図るプロセス」と定義されますが、病院においては「医療事故の回避又は低減を図るプロセス」と言い換えることができます。医療事故には患者への影響度の大きいアクシデントと影響度の小さいインシデント(ヒヤリハット)がありますが、私が扱うものはインシデントです。リスクマネジメントに携わる技師は私以外に各部署合わせて計12名おり、リスクマネージャーと呼ばれています。臨床検査科で発生したインシデントに対し、まず該当部署の責任者が再発防止策を考え、考え出された対策を12名のリスクマネージャーで検討し、最終的な対策を決定しています。該当部署以外のリスクマネージャーを含めて検討することで、別の視点からの原因や問題が浮き彫りとなり、対策に生かされる場合もあります。時には意見の相違により白熱した議論が展開されることもありますが、これもインシデントの再発を防ぎたいという思いの表れだと思います。再発するインシデントに対しては、院内の医療安全推進室と合同で原因の分析を行い、より効果的な対策が考え出される場合もあります。インシデントは発生しないに越したことはありませんが、インシデント対策の積み重ねがアクシデントの防止につながるため、些細なインシデントに対しても、しっかり対策を考えていきたいと思います。

私は日常業務では病理検査に所属しています。リスクマネージャーとしての立場もありますが、最も心がけていることは「ヒューマンエラーはいつでも起こり得る」という危機意識を常に念頭において業務を行うということです。病理診断は患者にとって最終診断となり、その後の治療方針が決まるため、検体取り違えや検体紛失、コンタミネーションなどのミスは絶対にあってはなりません。ホルマリン固定された検体から標本を作製するまでの間には数多くの工程があり、要所要所でミスを防ぐための工夫やシステム的な対策を行っています。しかし、重大なミスを確実に防ぐ対策は築いていても、病理検査は手作業が多いため、些細なミスを完全に無くすことはできません。ミスが起こった場合はその後の対応が重要であり、些細なミスでも報告するシステムを築いており、再発防止策をスタッフとともに考え、情報を共有するよう努めています。

最後に、検査件数や検査項目の増加に伴い、効率性が優先される傾向にありますが、ひとつひとつの検査を確実に、間違いなく行うことを最優先に考え、「ヒューマンエラーはいつでも起こり得る」という危機意識を忘れずに、真摯に日々の業務に取り組みつつ、リスクマネージャーとしても、信頼され、臨床検査科のリスクマネジメントの一翼を担う存在になれるよう、努力していきたいと思います。

微生物遺伝子検査課 一般検査係長 浅井幸江

「共に成長していく」

係長の立場として2部署目となる一般検査室では、尿検査が日常業務の大半を占め、尿中の細胞を顕微鏡で見ることに時間を掛けます。尿中の細胞成分は変性しやすく、色の濃淡などで細胞を分類しなければいけないため、患者背景や尿をどのように採取したかの情報も確認しながら検査を進めていきます。

一般検査室所属の要員は3名です。1名は育児短時間勤務中、私も含め2名は微生物検査室とワークシェアしており、普段は2名で仕事を行い当直明けや休暇、多忙時には微生物検査室から応援に来てくれています。昨年、一般検査室に異動となり、当直業務として一般検査は行ってきましたが日常業務としてこなすとなると、知識と経験も不足しており日々勉強の毎日です。

一般検査室は、尿検体や便検体、微生物検体の提出窓口となっており、患者さんや他の医療スタッフとのコミュニケーションも重要です。問い合わせも一般検査に限らず広範囲に渡るため、生化学検査・微生物検査・血液検査での経験を活かし、問い合わせにも柔軟に対応していきたいと考えています。

コロナ禍ということもあり、実技講習会が軒並みオンデマンド配信になり受講しやすくなった反面、自宅にいることで集中しにくい環境でもあります。育短中の要員もいるため、勉強会で得た情報を日常業務の会話の中でも共有する様にしています。また、判断に困る時は検査オーダーがなくても病理検査に染色をお願いしたり、結果が気になる時は標本を借りて確認したりと他部署の協力も仰ぐようにし、知識を積み重ねています。

一般検査室に配属されて2年となりますが、これからも小さな気づきを大切に要員と共に検査業務の整備を進めていきたいと考えています。