病理検査課長 瀬古周子
誇り高きマイスターの仕事
病理検査の仕事は一見、地味な作業です。生検材料や、手術で摘出された臓器を、切り出し、容器に詰め、自動包埋機にセットし、翌日、パラフィンで包埋し、ミクロトームで薄切し(うすぎりではありません。ハクセツです)、スライドガラスに貼付し、各種の染色を駆使し、プレパラート(標本)を作製する。
1mmにも満たない、小さな生検材料は、特に気を遣います。なぜなら、この小さな組織を取るのにも、患者さんは大きな痛みを伴っているからです。「取り直し」なんて、おいそれとは言えません。技師は、小さな組織を失くさないよう、濾紙に包んだり、スポンジで挟んだり、色をつけたり、細心の心配りを欠かしません。パラフィン包埋の時も、ピンセットの先にくっついた小さな組織片を、器用にパラフィンの中に埋めていきます。薄切の時に、組織が失くなってしまわないよう、大小ある組織片を、深さを考えながら埋めていきます。
ミクロトームでの薄切作業の際には、厚さ数ミクロンの切片が、エアコンの風に吹かれて、飛んで行ってしまうこともしばしば。薄くスライスされた切片を、割りばしの先にくっつけて、そっと水槽に浮かべます。最近では自動薄切装置なども開発されてはいますが、小さな生検材料は、機械では薄切することができません。技師が丁寧に面出しして、1mm単位の組織も失くさず薄切できるのです。
切片に色をつける工程の染色は、技師の腕のみせどころ。特に、絶妙な色のコントラストで染め分けされた特殊染色の標本は、本当に美しいです。
どんなに高名な病理医でも、標本の出来が悪ければ、正しい診断をすることができません。病理技師は、病気の診断を左右する重要な責任を担っているのです。
地味で細かい作業の連続ではありますが、どの過程においても、病理技師は手を抜けません。病理医が正しく診断できるよう、神経を使い、技術を駆使するマイスター(職人)の集団なのです。
病理技師は病理医とともに働いています。私は、病理技師は病理医の片腕として、信頼関係を築けなくてはいけないと思っています。しかし、医師から信頼を得るのは、なかなか簡単なことではありません。病理医の期待を裏切らず、要望に応えつつ、こつこつと関係を築いていくしかありません。病理技師として十分な知識や技術を持っていなければなりません。病理医から、標本作製についての意見を求められることもありますから、自分の意思、信念を持って、意見できる技師でなくてはいけません。
常に新しい情報にもアンテナを張っていなくてはいけません。これからはがんゲノム医療の時代、最新の治験や、遺伝子検査の知識も必要です。
私は、これから臨床検査技師として働く方々には、病理検査の面白さ、奥の深さを理解していただきたいと思っています。地味な作業も多いですが、病理技師として、診断に直接、関わっているということに責任とやりがいを感じることができます。
自分の仕事に誇りを持った「マイスター」をめざしていただきたいと思います。
生体検査課長 近藤規明
管理者として心がけていること ~未来へ繋ぐ~
管理職(臨床検査科の課長として)の役割は、会社(病院)の目標に対して、組織(臨床検査科)のパフォーマンスを最大限に引き出し、達成することにあります。
そのため我々は日々の研鑽を欠かすことはできせません。
[能力を磨く]
知的労働の現場において我々に求められるのは以下に示す5つの能力だといわれています。
1.基礎的能力(知的集中力と知的持続力)
2.学歴的能力(論理的思考力と知識の習得力)
3.職業的能力(直観的判断力と知恵の体得力)
4.対人的能力(コミュニケーション力とホスピタリティ力)
5.組織的能力(マネジメント力とリーダーシップ力)
ここに挙げた能力のうち、「基礎的能力」や「学歴的能力」はAI時代の到来により、すでにAIが人間を代替しつつあります。したがってAIによって置き換わることができない「能力」を自分自身で磨いていかなければなりません。
「人間の心」や「顧客(患者)の心」を相手とした我々の仕事は、AI革命の時代にも淘汰されることのない能力、すなわち「職業的能力」「対人的能力」「組織的能力」が求められています。
中でも経験や体験を通じてしか掴むことができない「職業的能力」の「直観的判断力」は
スキルやノウハウ(技術)に加えてマインドやハート(心得・姿勢)を重視し、自分自身の「再教育」を行っていますが、今後組織内にも広く浸透していければと考えています。
[部下とのコミュニケーション]
1.関心を持って聴く
以前、部下に対して「好きなこと」や「取り組んでいること」を尋ねてみると、その部下は熱心に語り始めました。こうしたやりとりをきっかけに、その後の私とのコミュニケーションが活発になり、仕事のパフォーマンスも向上し、お互いが「いい距離感」となり、現場の抱える問題点や若い世代の指導法に関しても積極的に意見を言ってくれるようになりました。
また、役職者の業務にも少なからず関心を持つようになり、以前は全く興味を示さなかったマネジメントに関しても前向きな発言に変わってきました。
何気ない会話が部下の成長に繋がる“きっかけ”となるのではないでしょうか。
2.アクノレッジメント(承認)する
部下の取り組みに対して、進捗や変化、成果などを相手に伝えることを心がけています。
「自己成長感」は人の意欲や自発性を促すエネルギー源になり得るとされており、目標に向かって確実に進んでいる、進歩していることを相手に伝える「フィードバック」を重視しています。
また、アクノレッジメントとは異なりますが、「良い仕事」をした時は素直に「褒める」ことも相手の意欲をかき立てるには有効な方法と考えます。
“未来へ繋ぐ”
夢や志を語りながら人間関係力を磨き、そこに仲間が集い、組織力を向上させ、一体感のある集団、そんな組織づくりを目指しています。
微生物遺伝子検査課長 加藤敏治
時代が変わっても変わらないこと ~今の時世だからこそ大事にしたいこと~
管理職に求められる素養や能力は時代とともに変化しており、ますます高度な能力が求められるようになっていると感じます。求められる能力が変化していく中でも私が信念として大事にしていることは人への気遣い」です。出勤してきた部下の様子がいつもと違うなと感じたら「大丈夫?」と必ず声をかけるようにしています。部下だけでなく、検査室業務を支えてくれている事務スタッフ、清掃委託業者、外部委託業者の方々にも、何もなくてもできるだけ声をかけるようにしています。声をかけてみると、業務に関することだけでなく、趣味、家族のこと、悩み事、思いもよらぬ話が聞けることもあり、そこからさらに会話が広がることもあります。日常の声かけによってコミュニケーションがとりやすい関係を築いておくことが、仕事に活かされることを今まで多く経験しました。
元来、部下にとって上司は話しかけづらい存在だと思います。イスに座って待っているだけでは、部下の声はほとんど聞こえてこないでしょう。上司から声をかけていくことで初めて心理的に安全な上司に近づくことができるのではと考えています。
コロナ禍の影響があるのか、昨今、人はますます不寛容になったような気がします。他者批判や自己中心的な言動を見聞きすることも少なくありません。このような時代だからこそ、「人への気遣い」がこれまで以上に大事であると感じています。
微生物遺伝子検査課は新型コロナウイルスのPCR検査を担う部門であり、コロナ禍でスタッフの肉体的・精神的負担は、これまで以上に増しています。そうした環境下で部下の負担が少しでも減り、チームのパフォーマンスを高めるためにも、私の信念である「人への気遣い」を忘れず、心理的に安全な上司であり続けたいと考えています。
成分分析課 血液検査係長 黒木聖久
スタッフが働きやすい環境・雰囲気を作り出す
係長は管理職としての職務遂行能力に加えて、専門家としての知識や技術が求められるポジションです。まして私は、50代の時に長い間配属されていたHLA検査から血液検査に異動になり知識や技術が浅いために自らも勉強する毎日です。そういったポジションにある私が大事にしていることは「スタッフが働きやすい環境・雰囲気づくり」です。私が管轄する血液検査係は、私を含めて5名のスタッフがいますが、私以外は全員が20代と30代であり、非常に若い職場です。彼らは学会や勉強会にも積極的に参加し、認定資格を取得するなど自己研鑽にも励んでいます。そういった職場環境において働きやすい環境・雰囲気を維持するために、「専門的知識の積極的な活用」、「権限移譲による係運営への参加」を意識しています。前者については認定資格を取得した技師に専門的知識を活用してもらうため、血液内科をはじめとする臨床医とのディスカッションにできるだけ参加できるよう配慮しています。また、後者については、権限移譲できる業務については、どんどん若手スタッフに協力してもらい、係の運営に自分自身も貢献しているという気持ちをもってもらうようにしています。業務を任せることで私自身が考えもつかなかったような素晴らしい提案をしてくれることも少なくありません。質の担保された結果を臨床に報告する上で機器の整備、日々の精度管理も大変重要ですが、職場で働くスタッフの心身の健康も重要な要素であると考えています。「毎日、出勤してくることが楽しい職場を提供する」が私の管理職としての大きな目標です。
血液検査係のスタッフは日常業務が多忙な中であっても、採血室が混雑していれば率先して応援に向かったり、業務改善の提案を挙げてくれたりと非常に前向きな姿勢をみせてくれています。こうした姿勢は彼ら自身の資質によるところが大いにあると感じていますが、スタッフが前向きな気持ちで働けるような職場環境を維持できるようサポートしていきたいと考えています。
超音波診断課 超音波診断課長 石神弘子
治療への架け橋として
超音波診断課は2021年4月に課として立ち上がり、同年10月には、院内の超音波検査を集約し『超音波センター』を開設しました。
当院検査科では、それまでも年間1万件を超える心エコー検査を始め、経食道心エコー、頭頚部や四肢の血管エコー、乳腺、甲状腺、関節といった体表エコーを行っていました。現在は腹部エコーも含め、神経や甲状腺以外の頸部臓器なども超音波センター内で行っています。このようにエコーは全身の観察に用いられるようになっています。エコーだけではなく、CT、MRIといった他の画像モダリティーの進化も目覚ましいものがあります。その中でエコーはやはり検者の技術に依存するということが必ずデメリットとして挙げられます。
そのデメリットをできるだけ少なくすれば、リアルタイム性や瞬時の血流情報などエコーでしか分からない情報も大変多く、エコーが患者さんにとって有益な検査になることは間違いありません。そのためには我々技師に任せてよかったと思ってもらえるレベルに到達し維持していくことが必要です。それには各自の継続した努力、学習も必要ですし、後輩を育てていくこと、教育することを技師全員が担わなければなりません。エコー検査に入り始めた多くの技師は先輩のようにできないことに落ち込みます。その時に感じたもっとできるようになりたい、もっと勉強しないといけないという気持ちをずっと持ち続けるこの向上心こそが最も大切な事だと思います。
エコー検査はその結果が直接、治療方針、方法の選択に繋がります。その責任を感じながら1例1例の検査に向き合うことが必要です。そのためにはエコーを担当する技師には、知識、技術そして態度が大切だと思っています。その3つが揃ってこそ、私たち技師が治療への架け橋となる検査ができるようになると信じています。
超音波診断課のスタッフと一緒に日々勉強しながら、これからも治療への架け橋をたくさん築いていきたいと思っています。
生体検査課 神経聴覚生理係長 北野直美
ふたつの大切にしていることと新たな気づき
私は生体検査室で神経聴覚生理係長として、脳波、聴覚、平衡機能検査などの管理を担当し、その他にも心臓や血管、甲状腺の超音波検査など、多くの検査に携わっています。私は患者さんと直接関わる仕事が好きで、大きなやりがいを感じながら働かせていただいています。ここでは日々の生体検査業務の中で、ふたつの大切にしていることと、新たな気づきについてお話ししたいと思います。
ひとつめの大切にしていることは、「検査についての丁寧な説明」です。患者さんは検査を受けるにあたり、さまざまな不安を抱えておられます。不安や緊張が検査に支障を来たすこともあります。私は「プレパレーション(心の準備)」という小児医療の概念を取り入れ、丁寧でわかりやすい検査説明を目指した活動を行っています。特に脳波検査では説明パンフレットの配布や小児病棟への出張説明などを行い、大きな効果を得ています。今後もスタッフを巻き込んで、「丁寧な説明」を増やしていきたいと思っています。
もうひとつの大切にしていることは、「リアルタイムで症状を把握すること」です。臨床検査技師の養成課程には、症状の聞き方を学ぶカリキュラムはありません。検査時に患者さんの状態をしっかり観察し、コミュニケーションを取りながら症状などを聞くことは、質の高い検査を行うためには必須の技術です。時には症状の悪化や発作状態のため緊急連絡が必要な場合もあります。私たちは最初に検査結果を知る医療従事者として、大きな責任があります。特に経験の浅い技師が症状を把握する力量の強化は今後の大きな課題です。
近年、急速な高齢化によって心不全、認知症、てんかん、動脈硬化などの患者さんが急増しており、検査依頼が増加傾向です。中でも脳波検査は少子高齢化と高齢発症てんかん、認知症の急増により、対象が子供から高齢者に変わってきました。また、高齢者のてんかん発作は症状が複雑でわかりづらい場合が多く、脳波検査の重要性が高まっているため、通常の脳波以外に医師による緊急簡易脳波検査も行っています。
このような中、長年幅広い業務に携わり、それぞれが独立した仕事のように感じていましたが、「高齢化」というキーワードによってひとつひとつが密接に関係していることに気がつきました。最近の研究では認知症とてんかんの関係について指摘されており、いろいろな仕事がどんどん繋がりつつあります。認知症の知識を深めるため、当院では今のところ唯一の「認定認知症領域検査技師」という資格も取得しました。
この気づきによって、以前は自身を広く浅いジェネラリストと感じていましたが、今後は認知症、てんかん、心疾患等の高齢化の総合的な知識を持った「幅広のスペシャリスト」を目指し、患者さんや仲間を大切にしながら、挑戦し続けていきたいと思っています。
病理検査課 病理検査第一係長 長田裕之
信頼されるリスクマネージャーを目指して
私が管理者として最も力を注いでいることはリスクマネジメントです。リスクマネジメントとは一般的に「リスクを組織的に管理(マネジメント)し、損失等の回避又は低減を図るプロセス」と定義されますが、病院においては「医療事故の回避又は低減を図るプロセス」と言い換えることができます。医療事故には患者への影響度の大きいアクシデントと影響度の小さいインシデント(ヒヤリハット)がありますが、私が扱うものはインシデントです。リスクマネジメントに携わる技師は私以外に各部署合わせて計12名おり、リスクマネージャーと呼ばれています。臨床検査科で発生したインシデントに対し、まず該当部署の責任者が再発防止策を考え、考え出された対策を12名のリスクマネージャーで検討し、最終的な対策を決定しています。該当部署以外のリスクマネージャーを含めて検討することで、別の視点からの原因や問題が浮き彫りとなり、対策に生かされる場合もあります。時には意見の相違により白熱した議論が展開されることもありますが、これもインシデントの再発を防ぎたいという思いの表れだと思います。再発するインシデントに対しては、院内の医療安全推進室と合同で原因の分析を行い、より効果的な対策が考え出される場合もあります。インシデントは発生しないに越したことはありませんが、インシデント対策の積み重ねがアクシデントの防止につながるため、些細なインシデントに対しても、しっかり対策を考えていきたいと思います。
私は日常業務では病理検査に所属しています。リスクマネージャーとしての立場もありますが、最も心がけていることは「ヒューマンエラーはいつでも起こり得る」という危機意識を常に念頭において業務を行うということです。病理診断は患者にとって最終診断となり、その後の治療方針が決まるため、検体取り違えや検体紛失、コンタミネーションなどのミスは絶対にあってはなりません。ホルマリン固定された検体から標本を作製するまでの間には数多くの工程があり、要所要所でミスを防ぐための工夫やシステム的な対策を行っています。しかし、重大なミスを確実に防ぐ対策は築いていても、病理検査は手作業が多いため、些細なミスを完全に無くすことはできません。ミスが起こった場合はその後の対応が重要であり、些細なミスでも報告するシステムを築いており、再発防止策をスタッフとともに考え、情報を共有するよう努めています。
最後に、検査件数や検査項目の増加に伴い、効率性が優先される傾向にありますが、ひとつひとつの検査を確実に、間違いなく行うことを最優先に考え、「ヒューマンエラーはいつでも起こり得る」という危機意識を忘れずに、真摯に日々の業務に取り組みつつ、リスクマネージャーとしても、信頼され、臨床検査科のリスクマネジメントの一翼を担う存在になれるよう、努力していきたいと思います。
微生物遺伝子検査課 一般検査係長 浅井幸江
「ともに成長していく」
係長の立場として2部署目となる一般検査室では、尿検査が日常業務の大半を占め、尿中の細胞を顕微鏡で見ることに時間を掛けます。尿中の細胞成分は変性しやすく、色の濃淡などで細胞を分類しなければいけないため、患者背景や尿をどのように採取したかの情報も確認しながら検査を進めていきます。
一般検査室所属の要員は3名です。1名は育児短時間勤務中、私も含め2名は微生物検査室とワークシェアしており、普段は2名で仕事を行い当直明けや休暇、多忙時には微生物検査室から応援に来てくれています。昨年、一般検査室に異動となり、当直業務として一般検査は行ってきましたが日常業務としてこなすとなると、知識と経験も不足しており日々勉強の毎日です。
一般検査室は、尿検体や便検体、微生物検体の提出窓口となっており、患者さんや他の医療スタッフとのコミュニケーションも重要です。問い合わせも一般検査に限らず広範囲に渡るため、生化学検査・微生物検査・血液検査での経験を活かし、問い合わせにも柔軟に対応していきたいと考えています。
コロナ禍ということもあり、実技講習会が軒並みオンデマンド配信になり受講しやすくなった反面、自宅にいることで集中しにくい環境でもあります。育短中の要員もいるため、勉強会で得た情報を日常業務の会話の中でも共有する様にしています。また、判断に困る時は検査オーダーがなくても病理検査に染色をお願いしたり、結果が気になる時は標本を借りて確認したりと他部署の協力も仰ぐようにし、知識を積み重ねています。
一般検査室に配属されて2年となりますが、これからも小さな気づきを大切に要員とともに検査業務の整備を進めていきたいと考えています。
超音波診断課 超音波診断係長 海老名祐佳
やりがいを見い出せる職場を目指して
生体検査課と私が所属する超音波診断課が担当する検査は全て患者さんと直に接して行う検査であり、そこが検体検査部門など他の検査部門と違う点になります。また超音波検査はプローブを握って検査した技師がその検査からの情報を最も多く得ることになります。よって超音波検査に携わる技師は患者さんへの接遇と超音波検査・診断に必要な知識の習得の両方が求められるため、超音波診断課の係長としてこの2点の教育とレベルアップに重点をおいています。
患者さんと接する検査を行っていると感謝されたりお礼を言われたりと仕事のモチベーションがあがることも多いですが、反対に検査や施設に対するご意見をいただいたり、苦情を受けることもあり、そうした厳しい声に対応することが重く感じることもあります。こちらに落ち度がある場合もあれば、そうでない場合もあります。しかし検査を受けられる患者さんは、患者さん自身の心理状態が健康な時とは異なることを理解した上で、スタッフには検査に臨んで欲しいと思っています。また病気の影響などで意思疎通が困難な患者さんや時に暴れたりする患者さんの検査を行うこともありますが、そのような時はスタッフ同士がお互いに声を掛け合い、協力して検査が行えるよう配慮しています。超音波検査は右手でプローブを持ち、左手で機器を操作し、目は画面を見ながら疾患を考え、必要な画像や情報が十分か頭をフルに働かせつつも、患者さんの様子を気にかけながら検査をします。また目の前に患者さんがいらっしゃるために分からないことがあっても上司や先輩にその場では気軽に質問することはできません。そのために新しく超音波検査を担当する前には画像の描出、機器の操作、疾患の知識など十分な教育が必要であり、技術、知識の習得には時間もかかります。
このことを踏まえて超音波診断課と生体検査課では全技師で協力して教育をサポートする体制をとっています。さらに積極的に学会や勉強会へ参加してもらい、超音波検査士の取得も促しています。このように超音波検査を担当すると大変なことも多いですが、私自身やりがいのある検査だと感じているので、超音波検査課の技師にもやりがいを持ってもらえるように努力していきたいです。また私自身がまだまだ知識不足だと感じることもあり、これからもスタッフと一緒に知識の習得に励みたいと考えています。
微生物遺伝子検査課 微生物検査係長 原祐樹
出勤することが楽しい職場環境を目指して
多くの人にとって会社は、自宅の次に過ごす時間が長い場所です。そして、多くの時間を過ごす場所が楽しい・心地よい場所であれば、人生の満足度は高くなります。仕事は決して楽なものではないですし、理不尽なことに遭遇することも少なくありません。決して楽ではない仕事を遂行していく中で、職場環境が悪ければ会社生活はとても辛いものになります。そこで、責任者として少しでも楽しい・心地よい職場環境を提供できるよう努めるようにしています。良い職場環境の提供について4つの取り組みを挙げさせていただきます。
1つめは「休暇の確保(代休の完全消化、時間有給の活用)」です。休暇の確保は比較的取り組みやすく、職場における満足度に直結するためです。「休みたいときに気兼ねなく休みがとれる」というのは非常に重要なことだと考えています。
2つめが「業務の均等化」です。つまり、「誰かしかできない業務をゼロにする」ことです。こうした業務があると休みにくい環境が生まれますし、「できる人」と「できない人」の間に上下関係を生む要因にもなります。裁量権の関係などで均等化が難しい業務もありますが、基本的な業務(日常業務、ISO関係業務)の均等化を意識するようにしています。
3つめが「マネージャー自身が心身ともに健康で心にゆとりを持つこと」です。マネージャーの持つ雰囲気は職場環境に大きく影響を与える因子であると考えています。マネージャーがピリピリしていたり、威圧感を漂わせている職場はそうした雰囲気になります。マネージャー自身が、心身とも健康で心にゆとりを持たなければ、周囲に気を配ることもできず、良い職場環境の提供はさらに困難になると考えています。私自身もゆとりがない時にはピリピリとした雰囲気を出していると感じることもあり、3つめの取り組みについてはまだまだ道半ばであると感じます。
最後の4つめですが、マネージャーは「役割」であって、人間関係の上下ではないと肝に銘じるようにしています。そこにあるのは、「役割の違い」と「裁量権の違い」だけです。それを勘違いして権力を振りかざすようになり、部下の意見などを寄せ付けないような管理は職場環境を一気に悪化させると考えています。マネージャーという「役割」に徹して、自身の裁量権を最大限活かしつつ、良い職場環境の醸成・維持を継続していきたいと考えています。
病理検査課 病理検査第二係 新田憲司
チームワークでがん診断の精度向上をめざす
細胞診検査は「細胞検査士」と呼ばれる認定資格を取得した臨床検査技師による鏡検によってなされます。最終診断は病理医に委ねられますが、患者さんに正確な結果を報告するためには己の知識や鏡検技術の向上が欠かせません。
私見ですが細胞検査士として重要な3つの要素を挙げさせていただきます。
1つめは、「知識のup to date」です。同じがんという括りでも組織型が異なると治療が異なってくるので、臨床情報をもとに細胞診断で用いる疾患分類は常に最新の状態にしておく必要があります。
2つめは、「患者さんのことを想う」です。臨床情報をもとに標本を鏡検して細胞所見や推定病変を記載していきますが、患者さんと一度も対面していないので患者さんの心境は分かりません。細胞診検査は、がんの検出を目的としていることが多いため患者さんはきっと不安だと思います。鏡検している標本が、家族や知人だったらと思いながら丁寧に、確実に、鏡検し判定をするように心がけています。
3つめは、「チームワークで臨む」です。私は細胞検査士になって11年が経過しましたが、まだまだ知らない疾患は山ほどあります。また、人間ですので見落としもあるかもしれません。そのため当院では、結果を報告するまでに必ず細胞検査士が2名で鏡検することになっています。また、難しい症例に遭遇した場合は、先輩の細胞検査士や病理医とディスカッションをすることができる環境が望ましいと考えています。
細胞診検査は、次の検査に繋げるための重要な役割を担っていますが、細胞診断だけで治療が開始される場合もあり、責任は重大です。しかし、非常にやりがいがある検査だと思います。
これから細胞診検査に従事する後輩には、私も諸先輩方にしていただいたように日常業務の習得の指導だけではなく、より信頼される細胞検査士の育成に努めたいと思います。
患者さんが、正しい診断がなされ最適な治療を受けられるよう、細胞検査士のスタッフ一同でがん診断精度の向上に励みたいと思います。
超音波診断課 超音波診断係 玉腰いづみ
幅広い知識と高い専門性を持つ検査技師をめざして
私は現在、超音波診断課で、心臓、血管、腹部、甲状腺、関節などの超音波検査を担当しています。入社し最初に配属されたのは検体部門の血液検査室でした。その後、生体検査課、超音波診断課と異動しました。生体検査に異動してから脳波検査や電気生理検査なども担当しました。当直業務を行うにあたり、検体検査と生体検査の両方を経験できたことは、検査技師としての視野がとても広がりました。今、超音波検査を担当して感じていることは、病態について一つの方向からのアプローチではなく、多方面からのアプローチができるようになったことです。
超音波検査士(循環器領域)の認定資格を取得し、学会、講習会に参加し自己研鑽に努めています。超音波検査を依頼する科は多くの診療科があり、多岐にわたる症例を数多く経験することができます。日々、勉強であり、成長ができる環境だと感じています。このような環境下で私自身も、先輩からたくさんのことを学びました。これからは私が自分の経験をプラスして後輩達へ伝えていかなければなりません。
私自身も、まだまだ未熟ですので、応えられないことも多いかもしれませんが、そこは一緒に考えて、勉強をし、ともに向上できればと思います。今後も幅広い知識をそなえつつ、信頼される技師になれるよう努力していきたいと思っています。
救急検査課 組織適合検査係長 坂本慎太郎
日本一の検査室を目指して
私の目標は、日赤愛知医療センター名古屋第二病院の組織適合検査室を日本一の移植検査施設にすることです。
当院は腎臓移植施設として件数も成績も日本でトップクラスを誇っています。我々組織適合検査室も、自施設の移植検査のみならず他の施設の検査も請け負っており、国内トップクラスの件数をこなしています。また、日本臓器移植ネットワークの特定移植検査センターとしての役割を担っており、東海地区で脳死・心停止ドナー(提供者)が発生した場合、多岐にわたる検査を24時間365日対応で行う体制を築いています。
このように実績を積むには非常に恵まれた環境下にありながら、自分の実力が施設の名声に伴っていないと常に感じていました。他施設のHLA検査技術者の方々と比べて、自分は何て未熟なのか!日本一の移植施設を支える検査室は日本一でなければならない!そんな想いを胸に、自分の成長が組織の成長につながると信じて、研究、発表、講演、大学院進学などがむしゃらに邁進してきました。
しかし今、係長として思うことは、誰か個人の成長によって組織が成長することはない、(正確には「あるべきではない」)ということです。働き方改革により、一部の人間の犠牲によって組織が成り立つような時代は終わりました。本当の意味での組織の成長とは、次世代へ経験が受け継がれ、個々が成長し続ける、そんな組織だと思います。国内の移植検査施設には、私より経験も実績も豊富な方々がたくさんいます。そのような施設では若くて優秀な人材が次々と生まれています。我々の検査室は、なかなかメンバーが定着せず苦しい時期がつづきましたが、最近徐々にですが成長の兆しが芽吹き始めてきたように感じます。
冒頭の目標ですが、私一人の力で叶えられるものではありません。組織としての成長が継続力を持ったとき、初めてその目標に近づけると思っています。私自身、いつまでも最前線にいられるわけではないでしょう。40歳にしてこのようなことを言うのは老け込みすぎていますが、私を踏み越えてくれる人材が育つまでは、せいぜい高い踏み台でありつづけたいと思っています。
生体検査課 術中機能診断係長 橋本光弘
最高のチームを目指して
私は生体検査課でプレイヤーとしてだけではなく、係長としてマネジメント業務にも携わらせていただいております。プレイングマネージャーとしては発展途上の私ですが、今後のビジョンを挙げさせていただきます。
私の目標は生体検査課全員の技量や知識の向上と均衡化です。以前の私は、一人のプレイヤーとして精度の高い検査を患者さんに提供できれば良いと考えていました。しかし、マネージャーとしての視点で考えたとき、少数精鋭のチームでは限界があり、個人の技量を磨くだけでは、チーム全体としてのレベルアップに繋がらないと思うようになりました。検査を受けられる患者さんは技師を選べません。技師のキャリアは様々ですが、どの技師が検査を行ってもクオリティの高い検査結果を提供することが重要であり、それが医療専門職としての責任です。こうした理由から、患者さんへより良い医療を提供するためには、チーム全体のレベルアップが必要不可欠であると考えます。
チームのレベルアップは技師教育がとても重要であると考えます。私が後進の指導で大切にしていることは、自分の考えを強要するのではなく、共感してもらい、目標までの道のりを一緒に考え、責任をもってゴールまで導くことです。私の指導や指示が一方通行の命令になってしまってはいけません。以前、相手の話を聞こうとしないで、自分の価値観を強要してしまったことがありました。結果的にその時は上手に教育することができませんでした。それ以降は、自分と相手の考えを共有し、どうしたらできるようになるのか一緒に考えて実践することで、少しずつですが確実に前進することができました。遠回りのようですが、これが一番の近道だと考えています。
検査結果を出すことだけではなく、患者さんの病気を診断するために適切な情報を提供することが、臨床検査技師として大切なことだと考えます。しかし一人では「最高のチーム」を実現することができません。チームの成長が必要不可欠です。今はまだゴールが見えず不安になったり、自分のマネージャーとしての資質を疑ったり、といろいろと悩んでしまう時もありますが、諦めることなく目標に向かって邁進したいと思います。
成分分析課 生化学検査係 吉川実季
風通しのよい職場を目指して
生化学検査では、患者さんと接する機会はほとんどなく、測定結果がどのように利用されているのかを直接目にする機会も多くはありません。しかし、眼には見えない患者さんの体の状態を確認するには欠かせない検査をしています。生化学検査での業務はその大部分が自動分析装置により測定した検査結果を報告するというものです。人の手を介さない分、報告する技師による検査結果の差は生まれにくい部署ではあります。しかし、精度の高い検査結果を報告するためには、自動分析装置の突然の不具合をできる限り未然に防ぎ、不具合が生じた際にはいち早く発見、対処していくことが重要です。私は生化学検査での配属が10年を超え、以前よりその判断に迷うことが少なくなったように感じます。生化学検査係には20代、30代の技師が多く配属されています。自動分析装置の不具合への対処は経験で判断できる場合もあるため、伝えていければと思っています。また、私自身がそういった若い技師とさほど年が離れていないため、何かあったときに相談しやすい存在でありたいと思っています。そのために、相談を受けた際には「頭から否定しない」ことを心がけています。否定されてしまうことが多いとミスやトラブルの際の報告や改善の提案などをためらう原因となるからです。報告や提案を気軽に行える方が業務や職場環境の改善につながると考えているので、報告や提案のしやすい風通しのよい環境にしていきたいと思っています。業務改善につながる提案をすることに経験年数は関係ありません。経験年数の短い技師のほうが新鮮な目で物事を見られるため、ベテランでは当たり前のこととしてとらえてしまうことへの疑問を抱き、改善につなげることができるかもしれません。些細なことであっても改善につながることは取り入れていきたいと考えています。この先働いていく上でも「否定しない」ことは大切にしていきたいです。
超音波診断課 超音波診断係長 海老名祐佳
幅広い見識を備えた超音波検査士を目指して
主に超音波検査を担当し、4つの領域の超音波検査士の資格を有しています。私が生理機能検査を行う部署に配属になった当時から、当院検査室では超音波検査を担当している技師は超音波検査士を目指す風土がありました。そんな中、私もまず始めに循環器領域の超音波検査士を取得しました。その数年後、血管領域が新設されたため、血管領域を取得し、続けて消化器領域を取得しました。さらに数年後、乳腺超音波検査に携わるようなり、自分の知識を確認する機会にと体表領域を取得し、現在に至っています。超音波検査士の試験を受けることでそれぞれの領域の疾患の特徴や鑑別など臨床な知識はもちろん、苦手としている超音波の物理的な原理も勉強することになり、結果的に試験を受ける前より精度の高い検査ができていると思います。また、継続的に試験を受けることでモチベーションを高く持ち、日々の検査を行えていますし、さらに向上心が上がったと感じています。超音波検査は担当する技師が判断しながら撮像していく検査です。私が患者さんであったら私の行う超音波検査を受けたいと思えるように今後も研鑽を重ねていきたいと考えています。
微生物遺伝子検査課 微生物検査係長 原祐樹
感染症診療と院内感染対策の番頭
微生物検査に係る資格は、二級臨床検査士(微生物)、認定臨床微生物検査技師(CMTCM)、感染制御認定臨床微生物検査技師(ICMT)の3つがあります。私は入職6年目から8年目にかけて先述の3つの資格を取得しました。
微生物検査の仕事は大きく2つに分けることができます。1つは「感染症の原因微生物を特定し、感染症診療・治療を支援すること」、2つ目は「院内感染の兆候をいち早く察知し、院内感染を防ぐこと」です。これら2つの業務に共通することは、「微生物検査が番頭になっていること」です。私たちが原因微生物を特定することで適切な治療に繋がり、院内感染の兆候をいち早く察知することで、院内感染の拡大抑止に繋がります。そして、この番頭としての業務を高いレベルで遂行していくための大番頭が有資格者であると考えています。特に有資格者の実力が最も試される局面が院内感染対策だと感じています。わずかな兆候を捉えて次の一手を練り、拡大阻止のための戦略を感染管理部門と協働で実践していくためには、高い見識と技術が必要になります。院内感染対策は重責でありますが、重責ゆえにやり遂げた際の達成感も大きい仕事でもあります。
最後に、資格の取得は1つの目標であるとともに通過点です。資格取得後も学会発表、論文執筆、勉強会への参加といった自己研鑽は必須です。自己研鑽を怠れば、あっという間に検査技術と菌の進歩に追い抜かれます。微生物検査のExpertとして矜持を持って自己研鑽を積み、日常業務での貢献、後輩への指導はもちろんですが、地域医療圏の微生物検査のレベルアップに少しでも貢献できればと考えています。
超音波診断課 超音波診断係 枝光泰聖
「エキスパート」としての自覚を持つ
私は超音波診断課に所属し、今年で10年目となります。現在は血管診療技師、超音波検査士(血管領域、循環器領域)、心電図検定1級の専門資格を有しています。
私が「エキスパート」として自覚を持って仕事ができるようになったきっかけは専門資格を取得しこれを活かした業務へ従事してからでした。取得する前や取得後しばらくは自分の技術や知識に自信を持てずにいました。
閉塞性動脈硬化症という主に下肢血管内の血流が悪くなる疾患があります。その治療にカテーテルによる血管内治療を行う場合、血管や患者さんの状態によっては被ばくの影響を少なくするため、放射線の代わりに超音波(エコー)を用いることがあり、私は資格取得後まもなくからその治療に参加しています。初めは執刀医の先生が望むような役割を担うことができず苦悩しました。場所は不慣れなカテーテル室、エコーを当てるのは術中の患者さんであり、当時若手であった自分には技術的にも精神的にもハードルが高いものでした。さらに先生から意見を求められても、うまく返答できないことも多々ありました。認定資格試験の前に先輩や上司が「資格の取得はゴールではなくスタートラインである」と教わりましたが、この時は身に染みて感じざるを得ませんでした。その後、懸命に自己研鑽に励みましたが、資格取得時の知識があったため現場で必要な新たな知識もスムーズに理解することができました。今では先生方から意見を求められても、私の見解を「エキスパート」として、自信をもって返答することができています。現在は閉塞性動脈硬化症に加え、バルーン大動脈形成術や経皮的中隔心筋焼灼術という治療にも参加しています。ここでも治療に即した専門知識の習得が不可欠なため、日々技術や知識の習得に励んでいます。
カテーテル治療の現場に関わり、専門資格を有し知識を活かして治療に参加することで、医師のみならず患者さんへの貢献を実感し、治療に関わる度に自信がついていきました。すべては専門資格の取得から始まり、取得することで新たな課題が見つかり、課題を乗り越えることで成長し、エキスパートと自覚できるようになったと現在は感じています。
今後はさらに自分の専門範囲を広げ、心エコー図学会認定専門技師や他の領域の超音波検査士の受験を目指していきたいと思っています。
病理検査課 病理検査第一係 岩田英紘
患者さんが「適切なゲノム治療」を受けられるために検査技師ができること
私は入職直後に病理検査に配属され、今年で12年目を迎えました。二級臨床検査士(病理)、細胞検査士、国際細胞検査士、認定病理検査技師の資格を保有しています。これらの資格を取得する過程で様々な基礎知識を学びましたが、「がんゲノム医療」の目覚ましい発展により、現在も新しい情報収集に努めている毎日です。
病理検査技師の主な役割は、患者さんから採取された組織から、病理医が診断を行うための「良質な標本を作製すること」です。しかし、現在では、組織中の「良質な遺伝子を保持すること」も検査技師の重要な役割となりました。その背景には、患者さん一人ひとりにあわせた最も効果的な治療の実現を目指す「個別化医療」が急速に進んだことに起因します。特にがんゲノム治療においては、組織中のがん細胞の遺伝子を調べて、治療薬がその患者さんに効果的か否かが決定されます。そのため、万が一、品質の悪い組織を使用した場合、患者さんにとって適切な治療機会の損失に繋がりかねません。例えば、遺伝子の品質を左右する重要な因子の一つに、「ホルマリン固定」が挙げられます。組織がホルマリンに浸漬されている時間だけでなく、体内から組織を採取してからホルマリンに浸漬するまでの時間も重要です。検査技師が遺伝子の最適な取り扱いを十分に理解し、臨床医や他職種にも協力を求めていく姿勢も大切です。
認定資格取得は、検査技師が日常業務を行う上でのスタートラインです。先に述べたように、多くの研究が日々行われており、今後はさらに高度な技術を用いた遺伝子検査が実装され、ますます遺伝子の取り扱いが重要になってきます。一方で、この分野は急速に発展したため、臨床現場では型どおりにいかず、それぞれの施設に合った最善の運用を手探りで進めているのも事実です。そのため、単に基礎知識を身に着けるだけではなく、『自ら現状に対する課題を見つけ、考え、積極的に臨床サイドに情報を発信していく』ことができる、そんな臨床検査技師が求められていくと考えています。
超音波診断課 超音波診断課長 石神弘子
治療への架け橋として
超音波診断課は2021年4月に課として立ち上がり、同年10月には、院内の超音波検査を集約し『超音波センター』を開設しました。
当院検査科では、それまでも年間1万件を超える心エコー検査を始め、経食道心エコー、頭頚部や四肢の血管エコー、乳腺、甲状腺、関節といった体表エコーを行っていました。現在は腹部エコーも含め、神経や甲状腺以外の頸部臓器なども超音波センター内で行っています。このようにエコーは全身の観察に用いられるようになっています。エコーだけではなく、CT、MRIといった他の画像モダリティーの進化も目覚ましいものがあります。その中でエコーはやはり検者の技術に依存するということが必ずデメリットとして挙げられます。
そのデメリットをできるだけ少なくすれば、リアルタイム性や瞬時の血流情報などエコーでしか分からない情報も大変多く、エコーが患者さんにとって有益な検査になることは間違いありません。そのためには我々技師に任せてよかったと思ってもらえるレベルに到達し維持していくことが必要です。それには各自の継続した努力、学習も必要ですし、後輩を育てていくこと、教育することを技師全員が担わなければなりません。エコー検査に入り始めた多くの技師は先輩のようにできないことに落ち込みます。その時に感じたもっとできるようになりたい、もっと勉強しないといけないという気持ちをずっと持ち続けるこの向上心こそが最も大切なことだと思います。
エコー検査はその結果が直接、治療方針、方法の選択に繋がります。その責任を感じながら1例1例の検査に向き合うことが必要です。そのためにはエコーを担当する技師には、知識、技術そして態度が大切だと思っています。その3つが揃ってこそ、私たち技師が治療への架け橋となる検査ができるようになると信じています。
超音波診断課のスタッフと一緒に日々勉強しながら、これからも治療への架け橋をたくさん築いていきたいと思っています。
病理検査課 病理検査第一係長 長田裕之
終わりなき学習の継続 ~病理検査の最新知識・技術を求めて~
私は病理検査に約20年携わっており、その過程で細胞検査士、国際細胞検査士、認定病理検査技師、有機溶剤作業主任者の資格を取得しました。
病理検査は大きく「組織検査」と「細胞診検査」に分かれますが、共通して言えることは、技師個人の技量が大きく検査に反映されるということです。
組織検査では、検査特性をしっかり理解し、出来上がった標本の良し悪しを評価する能力が病理技師には求められます。病理診断の根拠となる標本には高い品質が求められ、その標本を作製する病理技師の責任は非常に重いと言えます。また、標本作製の工程には、まだまだ手作業に頼る部分が多く、教科書を学ぶだけでは理解できない「技」も多く存在するため、「技」を若手技師へ伝承することも病理技師の役目と言えます。
細胞診は組織検査よりさらに個人の技量が反映される検査と言えます。
細胞診は婦人科、呼吸器をはじめとして乳腺、甲状腺など、ほぼすべての臓器が対象となります。それら各臓器の正常組織像はもちろんのこと、その臓器特有の良・悪性疾患の組織像と細胞像を理解することが細胞検査士には求められます。場合によっては細胞診の結果が最終診断となるため、細胞検査士の責任は非常に重いと言えます。
私は17年前に細胞検査士の試験に合格しましたが、その時はこれで勉強から解放されたと安堵しました。しかし、それは大きな間違いでした。試験のために勉強してきたことは典型症例であり、実際の業務で標本を観察すると、良悪の判定や悪性腫瘍の組織型の判定に悩む症例が多々あり、資格試験は最低ラインの知識の確認であることを思い知らされました。しかし、個人の技量が上がれば、その努力がダイレクトに正確な細胞判定に繋がるため、非常にやりがいのある業務だと思っています。
現在においても細胞判定に悩む症例が多いため、細胞診に携わる限り学習の継続が必要ですが、後輩の手本となることを目標に、今後も研鑚を積みたいと思います。
生体検査課 神経聴覚生理係長 北野直美
広い範囲を担当する中での専門性
私は1988年に就職し、1年間の育児休業と2年間の救急検査勤務を除き、30年以上生体検査で働いてきました。現在、生体検査では検査種類も技師数も増え、専門化が進んでいますが、私は超音波、脳波、聴覚平衡機能など、比較的広い範囲の検査を担当しています。
私が学術活動を本格的に始めることができたのは、子育てが一段落してからでした。43歳で超音波検査士、52歳で認定認知症領域検査技師の資格を取得しました。脳波専門技術師の受験も検討しましたが、複数の資格の維持管理(指定の講習会等に参加し、点数を取得する必要があります)は時間的に難しいと判断しました。そういった経緯もあり、脳波関連では月毎の脳波症例検討会の開催や、いろいろな勉強会・学会等への参加など、規定に縛られず積極的な学術活動を行っています。長年広い範囲の検査を担当する中で、多くの検査に共通する認知症、高齢化、意識障害などに興味を持ち、自身の専門分野と考え積極的に学んでいます。個々の検査だけではなく、臨床面での専門性も臨床検査技師として重要ではないかと考えています。
仕事とプライベートの両立の難しさに直面することも度々ありましたが、自身の成長において貴重な経験だったと思います。いろいろな経験を生かし、患者さんとの一期一会を大切にし、お話しに耳を傾けながら、心を尽くして仕事をしていきたいと思っています。
生体検査課 術中機能診断係 井澤和美
検査での墾田は永年の財産である
私は生体検査課で主に神経生理分野を担当しており、日本臨床神経生理学会の認定資格(脳波分野、筋電図・神経伝導分野、術中脳脊髄モニタリング分野)を取得しています。臨床検査技師は単に検査結果を医師へ提出するのではなく、「検査結果から得られた的確な情報を医師へ提供する」ことが大切であると考えています。
例えば、部分的な痺れや脱力といった症状で神経伝導速度検査を行い、数値や波形の結果から全身性に及ぶ病態が予想された場合、医師にその旨を報告し、他の追加検査を提案することがあります。しかし知識が不足していると病態を判断することができず、得られた結果の整合性があやふやなものになります。それは時に誤診を招く可能性にも繋がるため、検査のプロとして知識をしっかり身につけておかなければなりません。それを示す指標が認定資格であると私は考えています。「検査結果から得られた情報を迅速かつ的確に判断し、時には医師へ提案もする」ことが臨床検査技師に求められており、臨床からの信頼につながると感じています。
偉そうに綴っていますが、私も当初は思い通りにいかない日々の連続。中でも術中神経モニタリングでは自施設で前例のない項目に悩まされる日々。そんな折、参加した勉強会で講師に相談したところ「前例がなくてできない、ではダメ。アドバイスなら全国の技師からもらえばいい。自分の施設の最初の人に貴方がなればええんや!」と叱咤激励を受け、挑戦を続ける毎日です。エキスパートって何だろう?明確な答えはありませんが、最新の情報を収集し常に進歩する医療へ対応していく技師、どんな困難な状況であっても自分の知識と経験を用いて検査・患者さん・病態と向き合うことを諦めず挑戦を続ける技師のことではないかと思います。自分には無理と決めず一歩ずつ耕して進めば、きっとそれは貴方にとって永遠の私財となりますよ。
病理検査課 病理検査第二係長 水嶋祥栄
挑戦、前進、また挑戦
私は入職して2023年4月で26年目を迎えますが、この期間の内、23年間は病理検査業務に従事しています。配属後まもなく細胞診の勉強を開始し、20代で細胞検査士の資格を取得しました。現在、日本人の2人に1人が一生のうち1度「がん」に罹り、3人に1人が「がん」で亡くなる時代です。がんを早期発見し正確な診断に寄与することのできるこの仕事は、現代社会において非常に重要な役割を担っていると思い、日々励んでいます。
病理検査の業務は多岐に渡り、2022年度からは、電子顕微鏡標本作製を担当しています。標本作製にはこれまで経験してきた病理標本作製の技術が、病変部位の観察•撮影には細胞検査士として培った知識が大きく役立っています。しかしながら、極めて微小な小さな試料を、大きな電子顕微鏡装置で観察する」という非常に特殊な分野で、年間500件以上の標本作製を行うことは容易ではありません。師匠には怒られ、褒められの日々です。診断に役立つ良い標本の作製、適切な画像提供を行うためには、電子顕微鏡のより深い知識が必要となります。そこで、さらなる挑戦。2023年は、46歳にして「日本顕微鏡学会電子顕微鏡二級技士技術認定試験」に挑戦しようと考えています。
病理検査をはじめとした検体検査部門の検査技師は、患者さんと直に接する機会が少なく、患者さんにとって馴染みのない存在です(医療ドラマでもイマイチ目立たない存在)。しかし、臨床検査技師の役割は、患者さんが適切な治療に導かれるように、技術と知識を役立てること。日々進歩する医療技術に乗り遅れないよう、常に学ぶ姿勢を持ち続けたいと考えています。
超音波診断課 超音波診断係 枝光泰聖(2012年度入職)
【実録】臨床検査技師としてキャリア形成を目指した9年間
入職10年目の枝光です。2012年に大学を卒業し、当院に就職しました。生体検査課に配属され、現在に至るまで主に超音波検査に携わっています。2021年4月に組織の体制変更があり、現在は新設された超音波診断課に所属しています。
超音波検査については、1年目の秋頃から患者さんの検査を担当するようになり、冬には新人ながら周囲の大きなサポートもあり、超音波検査に関する学会で演題を発表することができました。この1年目の学会発表の経験は大きく、これまで私は人前で話すことが苦手と思っていましたが、苦手意識が薄まり、その後も学会発表を行うことができました。また、昨年度(2020年度)は院外のセミナーで講師として話をする機会をいただくこともできました。無事に講師を務めることができ、これまでの学会発表の経験が活きていると実感しました。以前の私なら違っていたかもしれませんし、そもそも講師の依頼もなかったかもしれません。自身のキャリアを活かすことができ、臨床検査の質の向上に、微力ながらも自分なりの貢献ができたのではないかと思います。
4年目には1つ目の専門資格である血管診療技師を取得しました。資格取得のためには多大な時間と労力が必要ですが、その分、合格したときの達成感はこの上ないものがあります。また、専門資格の取得後には「自分が出した検査結果は、関わる方々に大きな影響を及ぼす」ことをより一層感じるようになり、自己研鑽の大切さを日々痛感しています。
5年目、6年目と続けて超音波検査士の血管領域、循環器領域を取得しました。超音波検査士の取得は、自己学習だけでなく、当院ですでに資格を取得している先輩や診療科の先生方からの助言をいただけたことが、取得できた大きな要因の一つだったと思います。
その後、心電図検定1級を取得しました。心電図は生理検査において基本の業務となりますが、新人の頃から苦手意識があり、踏み込んだ勉強を後回しにしていました。今後も心電図の知識は必要であり、努力もせずに高度な理解に達するほど甘くはありません。7年目にして一念発起し、合格することができ、確実にステップアップができたと感じました。
これまでもそうでしたが、臨床検査技師として働いている限りは、特殊な症例や様々な因子が絡む難解な症例に遭遇する可能性があります。その時には、病態を正しく理解し、精度の高い検査結果を提供できるよう、今後も自己研鑽を継続し、医療に貢献していきたいと思っています。
微生物遺伝子検査課 微生物検査係 寺本侑弘(2014年度入職)
入職8年目の寺本です。私は、2014年に大学を卒業し当院に就職しました。私が就職した頃は、新人技師のローテーションが行われており、私は、入職時は血液HLA検査係に配属され、その後、2年目から3年目の間に一般検査、生化学検査、救急検査、微生物検査、生体検査、病理検査と、すべての部署を経験しました。
ローテーションで所属した血液HLA検査係においては、当時、血液検査室で行っていた血小板偽低値に関する検討を学会で発表することができました。私の初めての学会発表です。ローテーション終盤の3年目には、多くの分野を経験した強みを生かして、当院においてまだ取得者がいなかった緊急臨床検査士を取得しました。翌年以降は、自身の経験を活かすため、若手技師の主導による緊急臨床検査士の資格取得支援活動を展開しました。この活動は後輩によって引き継がれ、現在では、若手技師のキャリアアップの登竜門の一つとなっています。
4年目より、現在所属する微生物検査係に配属となりました。5年目に2級臨床微生物検査士を取得し、翌年には、後輩の2級臨床微生物検査士の資格取得支援活動を行いました。5年目、6年目には微生物検査に関する検討を愛知県医学検査学会で発表し、6年目の発表では学術奨励賞をいただくことができました。7年目には、6年目で発表した内容を論文として発表しました。また、日本臨床微生物学会総会・学術集会においては微生物検査室での新たな検討について発表し、現在、こちらも論文として執筆している最中です。
8年目となった現在は、微生物検査のスペシャリストを目指して、認定臨床微生物検査技師の資格を取得するべく日々精進しています。諸先輩方に比べ、専門分野を極め始める時期は遅くなりましたが、若手の時期に当検査室のすべての分野の検査に触れることができたのは非常に貴重な機会であったと思います。他分野の検査の経験に基づく検査結果や症例の理解は、今後の臨床検査技師人生において役立つものと自負しております。
超音波診断課 超音波診断係 鈴木みどり(2017年度入職)
超音波検査を通じて臨床貢献を
今年で入社して5年目になります。1年目は各部署をローテーションし、2年目から生体検査へ配属になりました。現在は主に超音波検査を担当しています。循環器領域から始まり、今では血管エコー検査、胎児心エコー検査などにも携わらせてもらっています。最初はうまくできない自分に落ち込むことがたくさんありましたが、日々の業務から多くのことを吸収し、先輩技師の熱心な指導のおかげで、ここまで来ることができました。当院は高度急性期病院であり、急性期の重篤な症例や様々な疾患に遭遇するので、勉強は欠かせません。そして、毎日目標を持って仕事をすることで新しい発見があり、仕事をすることの楽しさも増しています。また、患者さんからの「ありがとう」の言葉や臨床に貢献できた時の喜びが私の活力となっています。今後は超音波検査士の資格を取得し、超音波診断課の一員として信頼される人材になることを目指していきたいと思います。
生体検査課 神経聴覚生理係 梶美帆(2018年度入職)
多分野の生体検査に携わる技師として
当院に臨床検査技師として就職して4年目を迎え、現在私は生体検査課で勤務しています。当課には25名の技師が所属しており、検査の種類は多岐にわたっています。技師によって携わる検査は異なり、ひとつの分野を専門的に担当する技師もいれば、多分野を幅広く担当する技師もいます。私は後者にあたり、心電図、肺機能、心エコー、脳波、聴力などを担当しています。異なる分野の仕事を覚えることは苦労もたくさんありますが、幅広く検査に携わることによって得られるメリットも感じています。
心電図や心エコーは循環器内科、肺機能は呼吸器内科、脳波は脳神経内科、聴力は耳鼻科といったように、以前は全く異なる分野のようにとらえていました。しかし、多くの疾患を抱えている場合や、複数の診療科が関わる疾患も多く存在することを知りました。このような場合、多分野の検査に携わって得た知識を生かすことができれば、多くの視点で患者さんや疾患を診て考えることができ、この点が私の大きな“強み”となっています。
学ぶ範囲が広い分、まだまだ勉強が追いついていないと感じることもありますが、当課には認定資格を持つ先輩技師が多く、手厚い指導を受けながら学ぶことができます。
今後はさらに知識や技術を身につけて向上していきたいと考えています。
超音波診断課 超音波診断係 河村美奈(2018年度入職)
毎日が勉強と経験の積み重ね
私は臨床検査技師として働き始めて4年目です。はじめの半年間は各部署をローテーションし、その後は生体検査部門に配属されました。現在は超音波検査を中心に担当しています。超音波検査は多くの知識と技術が必要なため、はじめの頃は検査に時間がかかってしまい、患者さんへ負担をかけてしまったこともありました。そんな時は、先輩方に助けていただき、アドバイスをもらうこともありましたが、現在ではほとんどの患者さんを一人で担当できるようになりました。心エコーからはじめた超音波検査も、現在では全身の血管エコー、甲状腺エコーを担当しています。難しい、大変だと感じることも多くありますが、患者さんに「ありがとう」「頑張ってね」「あなたに検査してもらえてよかった」などと声をかけていただけるととても嬉しく、これからも頑張ろうと思うことができます。知識も技術もレベルの高い先輩方に囲まれ、毎日が勉強の日々ですが、1日でも早く先輩方へ追いつけるよう今後も精進していきたいです。
救急検査課 組織適合検査係 中嶋萌夏(2020年度入職)
自分にできる業務が増えていくことが嬉しい
入社して今年で3年目を迎えます。救急検査課組織適合検査係として、主に移植に関わる組織適合性検査を行っています。HLAタイピングやリンパ球クロスマッチ、抗HLA抗体検査など、学生の頃には教科書に数ページしか記載されていなかった分野の検査を実施しており、入職してから毎日新しいことを覚えて、日々自分ができるようになった検査や業務が増えていくことが嬉しく、やりがいを感じながら働いています。組織適合性検査に関わっている検査技師は少ないため、自分にしかできない検査を行っているのだという責任感や緊張感がありますが、自信を持って検査できるようにこれからも励みます。
他にも採血業務や日直・宿直業務があります。当院では外来の患者さんの採血を臨床検査技師が行っているため、採血業務も大事な仕事の一つです。患者さんの負担を最小限にし、適切に採血するよう心がけています。宿日直業務では先輩方に丁寧に指導していただき、不安無く検査することができるようになってきたと思います。
できるようになったことが増えた一方で、勉強不足も感じており、自信を持って業務に当たるために知識や技術をたくさん習得できるよう努力していきます。
超音波診断課 超音波診断係 石川奈穂(2021年度入職)
2年目技師として楽しみながら成長していきたい
臨床検査技師として働き始めて2年目となりました。1年目はまず乳腺エコー検査を教えていただきましたが、初めはプローブの走査もうまくいかず、白黒の画像をみても何がなんだか分かりませんでした。同じように心エコーの研修を行っていた同期と、「私たちはエコーの検査がいつになったらできるようになるのだろうか」と毎日のように話し、励まし合っていたことを覚えています。たくさんの先輩に教えていただきながら検査の件数を重ね、今では画像の意味が分かるようになり、1人で検査を行えるようになりました。
2年目となり現在は心エコーの研修をしています。今はまだ1人で検査を行うのは不安で、先輩の力を借りていますが、少しずつ思い通りの画像を描出できるようになってきました。日々の業務の中で成長を感じることができ、自信につながっています。
まだまだ技術、知識不足のなか、必死に毎日を過ごしていますが、仕事終わりに同期と話す時間、先輩方とたわいもない会話をする時間が、リフレッシュできる貴重な時間です。最近は、終業後同期と小一時間話すことが日課です。これが1日の楽しみであり頑張る源となっています。
上手くいかず落ち込むこともたくさんありますが、周りの人の支えもあり楽しみながら毎日過ごせています。知識豊富な先輩方からたくさんのことを学ぶことができる環境に感謝し、少しでも早く信頼される技師となれるよう、これからも知識技術の向上に努めていきたいと思います。
成分分析課 血液検査係 伊藤永泰(2021年度入職)
日々勉強 -高いレベルを目指して-
当院に入職して二年目となりました。私は、現在、成分分析課の血液検査係として、血算、凝固、顕微鏡による白血球分画、フローサイトメトリーなどの検査に携わっています。入職したてのころは、検査値の解釈や分類に迷う細胞など戸惑うことばかりでしたが、経験豊富な先輩方のご指導のおかげで自信をもって結果を返すことができるようになりました。特に医師から結果の解釈について相談されたときに、自分の考えを伝えて問題が解決した時には、とてもやりがいを感じます。
また、最近では、当直に入るようにもなりました。当院は高度救命救急センターが設置されているため、当直中にも重篤な患者さんが多く搬送されてきます。患者さんが多いということは、それだけ検査しなければならない検体も多くなります。そのため、私はミスをしないように一つの作業に集中することはもちろん、次に何をするかを考えて動くことを大切にしています。
一方、昨年の終わりから担当するようになったフローサイトメトリー検査では、知識不足を感じています。日々の業務で経験する症例が、いつも典型的な検査所見を示すとは限らないため、その症例で起こりえること、起こりえないことを頭に入れたうえで検査を行う必要があります。そのため、日々のルーチン業務を大切にし、知識を蓄えていきたいと思います。
また、学会や研修会に参加して、日々発展していく検査業務に対応できる技師を目指します。
救急検査課 救急検査係 神宮司帆乃香(2021年度入職)
この人なら大丈夫。と言われるような技師になるために
私は臨床検査技師として働き始めて2年目になります。働き始めた頃は、新しい環境に慣れたり、多くの業務を覚えたりすることに必死で、検査技師としても社会人としても、自覚や覚悟が足りなかったと思います。しかしまわりの先輩方が、社会人としての正しい立ち振る舞いや言葉遣い、検査技師としての知識やスキルを、嫌な顔一つせず教えてくださいました。そのおかげで今の自分がいると思います。
そして2年目になると同時に、初めて後輩ができました。それはつまり、わからないことを質問する側から質問される側に変わったということです。その事実を自覚したとき、この人に聞けば大丈夫と思われる先輩になれるのだろうかと思わずドキッとしました。このまま先輩という立場になってはいけないと思い、曖昧に覚えている事や疑問に思う事などを明確にするようにしました。
今後、経験年数が長くなるにつれて責任のある業務が増えてくると思います。この人がいれば大丈夫、この人なら任せられる、と思われるような検査技師になりたいと考えています。そのために、周りの状況や人の動きを把握し、柔軟な対応ができるように精進したいと思います。
超音波診断課 超音波診断係 関萌里(2021年度入職)
先輩方に追いつくために
臨床検査技師として働き始めて2023年4月で三年目を迎えます。私は超音波診断課に所属しており、現在は生理検査の中でも主に心臓のエコー検査を担当しています。最初は心臓の病気に関することも分からないことや知らないことが多く、心臓を描出することも難しく感じました。検査ができるようになるのか不安なこともありましたが、優しく丁寧に教えてくださる先輩方に助けられ、現在は様々な症例の患者さんの検査を担当しています。しかし、まだまだ学ぶことも多く、研究会や学会などに参加して勉強しています。医師が行う検査のサポートにつくこともあり、循環器内科医や脳神経内科医の方々にも指導していただきながら知識を深めています。最近は心臓のエコー検査だけではなく、血管のエコー検査の勉強も始めました。早く先輩方みたいに検査ができるよう、日々の業務で経験を積んでいきたいと思います。
また、日当直業務もありますが、普段の業務とは違い主に検体検査を行います。検体検査に所属している同期の技師と比べるとまだ不慣れな部分もありますが、先輩方だけではなく同期の技師にも力を借りながら検査をしています。エコー検査、そして日当直業務においても早く一人前になれるよう、これからも努力していきたいです。
成分分析課 血液検査係 野澤真裕美
先輩ママの言葉 ~周りの方々の支えのおかげで、仕事に励むことのできる職場~
私は現在、一児の母であり子育てをしながら仕事をしています。出産後、7ヶ月の育休を経て、産休前に所属していた部署に復帰しました。
復帰から1年半ほどは5時間の育児短時間勤務で働かせていただき、生活のペースが掴めてきた現在は6時間勤務で働いています。
毎日が慌ただしく、仕事も育児もどちらも中途半端なのではと落ち込むこともありましたが、周りの皆さんのおかげで乗り越えることができています。上司、同僚の方々には急な休みでご迷惑をおかけすることもありますが、ご理解をいただき本当に感謝しています。当検査室には子育ての先輩がたくさんいるので、育児の話を聞いてもらったりすることでいろいろと励みにもなっています。
また、出産前に認定資格を取得しており、現在は資格更新に向けて、家族に協力してもらいながら学会や勉強会にも参加しています。もう少し育児が落ち着いたら新たな資格にもチャレンジしていきたいです。
仕事と育児の両立は周りの協力なしには難しいですが、これからも業務に貢献できるよう頑張ります!