
主に超音波検査を担当し、4つの領域の超音波検査士の資格を有しています。私が生理機能検査を行う部署に配属になった当時から、当院検査室では超音波検査を担当している技師は超音波検査士を目指す風土がありました。そんな中、私もまず始めに循環器領域の超音波検査士を取得しました。その数年後、血管領域が新設されたため、血管領域を取得し、続けて消化器領域を取得しました。さらに数年後、乳腺超音波検査に携わるようなり、自分の知識を確認する機会にと体表領域を取得し、現在に至っています。超音波検査士の試験を受けることでそれぞれの領域の疾患の特徴や鑑別など臨床な知識はもちろん、苦手としている超音波の物理的な原理も勉強することになり、結果的に試験を受ける前より精度の高い検査ができていると思います。また、継続的に試験を受けることでモチベーションを高く持ち、日々の検査を行えていますし、さらに向上心が上がったと感じています。超音波検査は担当する技師が判断しながら撮像していく検査です。私が患者さんであったら私の行う超音波検査を受けたいと思えるように今後も研鑽を重ねていきたいと考えています。
微生物検査に係る資格は、二級臨床検査士(微生物)、認定臨床微生物検査技師(CMTCM)、感染制御認定臨床微生物検査技師(ICMT)の3つがあります。私は入職6年目から8年目にかけて先述の3つの資格を取得しました。
微生物検査の仕事は大きく2つに分けることができます。1つは「感染症の原因微生物を特定し、感染症診療・治療を支援すること」、2つ目は「院内感染の兆候をいち早く察知し、院内感染を防ぐこと」です。これら2つの業務に共通することは、「微生物検査が番頭になっていること」です。私たちが原因微生物を特定することで適切な治療に繋がり、院内感染の兆候をいち早く察知することで、院内感染の拡大抑止に繋がります。そして、この番頭としての業務を高いレベルで遂行していくための大番頭が有資格者であると考えています。特に有資格者の実力が最も試される局面が院内感染対策だと感じています。わずかな兆候を捉えて次の一手を練り、拡大阻止のための戦略を感染管理部門と協働で実践していくためには、高い見識と技術が必要になります。院内感染対策は重責でありますが、重責ゆえにやり遂げた際の達成感も大きい仕事でもあります。
最後に、資格の取得は1つの目標であるとともに通過点です。資格取得後も学会発表、論文執筆、勉強会への参加といった自己研鑽は必須です。自己研鑽を怠れば、あっという間に検査技術と菌の進歩に追い抜かれます。微生物検査のExpertとして矜持を持って自己研鑽を積み、日常業務での貢献、後輩への指導はもちろんですが、地域医療圏の微生物検査のレベルアップに少しでも貢献できればと考えています。
私は超音波診断課に所属し、今年で10年目となります。現在は血管診療技師、超音波検査士(血管領域、循環器領域)、心電図検定1級の専門資格を有しています。
私が「エキスパート」として自覚を持って仕事ができるようになったきっかけは専門資格を取得しこれを活かした業務へ従事してからでした。取得する前や取得後しばらくは自分の技術や知識に自信を持てずにいました。
閉塞性動脈硬化症という主に下肢血管内の血流が悪くなる疾患があります。その治療にカテーテルによる血管内治療を行う場合、血管や患者さんの状態によっては被ばくの影響を少なくするため、放射線の代わりに超音波(エコー)を用いることがあり、私は資格取得後まもなくからその治療に参加しています。初めは執刀医の先生が望むような役割を担うことができず苦悩しました。場所は不慣れなカテーテル室、エコーを当てるのは術中の患者さんであり、当時若手であった自分には技術的にも精神的にもハードルが高いものでした。さらに先生から意見を求められても、うまく返答できないことも多々ありました。認定資格試験の前に先輩や上司が「資格の取得はゴールではなくスタートラインである」と教わりましたが、この時は身に染みて感じざるを得ませんでした。その後、懸命に自己研鑽に励みましたが、資格取得時の知識があったため現場で必要な新たな知識もスムーズに理解することができました。今では先生方から意見を求められても、私の見解を「エキスパート」として、自信をもって返答することができています。現在は閉塞性動脈硬化症に加え、バルーン大動脈形成術や経皮的中隔心筋焼灼術という治療にも参加しています。ここでも治療に即した専門知識の習得が不可欠なため、日々技術や知識の習得に励んでいます。
カテーテル治療の現場に関わり、専門資格を有し知識を活かして治療に参加することで、医師のみならず患者さんへの貢献を実感し、治療に関わる度に自信がついていきました。すべては専門資格の取得から始まり、取得することで新たな課題が見つかり、課題を乗り越えることで成長し、エキスパートと自覚できるようになったと現在は感じています。
今後はさらに自分の専門範囲を広げ、心エコー図学会認定専門技師や他の領域の超音波検査士の受験を目指していきたいと思っています。
私は入職直後に病理検査に配属され、今年で12年目を迎えました。二級臨床検査士(病理)、細胞検査士、国際細胞検査士、認定病理検査技師の資格を保有しています。これらの資格を取得する過程で様々な基礎知識を学びましたが、「がんゲノム医療」の目覚ましい発展により、現在も新しい情報収集に努めている毎日です。
病理検査技師の主な役割は、患者さんから採取された組織から、病理医が診断を行うための「良質な標本を作製すること」です。しかし、現在では、組織中の「良質な遺伝子を保持すること」も検査技師の重要な役割となりました。その背景には、患者さん一人ひとりにあわせた最も効果的な治療の実現を目指す「個別化医療」が急速に進んだことに起因します。特にがんゲノム治療においては、組織中のがん細胞の遺伝子を調べて、治療薬がその患者さんに効果的か否かが決定されます。そのため、万が一、品質の悪い組織を使用した場合、患者さんにとって適切な治療機会の損失に繋がりかねません。例えば、遺伝子の品質を左右する重要な因子の一つに、「ホルマリン固定」が挙げられます。組織がホルマリンに浸漬されている時間だけでなく、体内から組織を採取してからホルマリンに浸漬するまでの時間も重要です。検査技師が遺伝子の最適な取り扱いを十分に理解し、臨床医や他職種にも協力を求めていく姿勢も大切です。
認定資格取得は、検査技師が日常業務を行う上でのスタートラインです。先に述べたように、多くの研究が日々行われており、今後はさらに高度な技術を用いた遺伝子検査が実装され、ますます遺伝子の取り扱いが重要になってきます。一方で、この分野は急速に発展したため、臨床現場では型どおりにいかず、それぞれの施設に合った最善の運用を手探りで進めているのも事実です。そのため、単に基礎知識を身に着けるだけではなく、『自ら現状に対する課題を見つけ、考え、積極的に臨床サイドに情報を発信していく』ことができる、そんな臨床検査技師が求められていくと考えています。
超音波診断課は2021年4月に課として立ち上がり、同年10月には、院内の超音波検査を集約し『超音波センター』を開設しました。
当院検査科では、それまでも年間1万件を超える心エコー検査を始め、経食道心エコー、頭頚部や四肢の血管エコー、乳腺、甲状腺、関節といった体表エコーを行っていました。現在は腹部エコーも含め、神経や甲状腺以外の頸部臓器なども超音波センター内で行っています。このようにエコーは全身の観察に用いられるようになっています。エコーだけではなく、CT、MRIといった他の画像モダリティーの進化も目覚ましいものがあります。その中でエコーはやはり検者の技術に依存するということが必ずデメリットとして挙げられます。
そのデメリットをできるだけ少なくすれば、リアルタイム性や瞬時の血流情報などエコーでしか分からない情報も大変多く、エコーが患者さんにとって有益な検査になることは間違いありません。そのためには我々技師に任せてよかったと思ってもらえるレベルに到達し維持していくことが必要です。それには各自の継続した努力、学習も必要ですし、後輩を育てていくこと、教育することを技師全員が担わなければなりません。エコー検査に入り始めた多くの技師は先輩のようにできないことに落ち込みます。その時に感じたもっとできるようになりたい、もっと勉強しないといけないという気持ちをずっと持ち続けるこの向上心こそが最も大切なことだと思います。
エコー検査はその結果が直接、治療方針、方法の選択に繋がります。その責任を感じながら1例1例の検査に向き合うことが必要です。そのためにはエコーを担当する技師には、知識、技術そして態度が大切だと思っています。その3つが揃ってこそ、私たち技師が治療への架け橋となる検査ができるようになると信じています。
超音波診断課のスタッフと一緒に日々勉強しながら、これからも治療への架け橋をたくさん築いていきたいと思っています。
私は病理検査に約20年携わっており、その過程で細胞検査士、国際細胞検査士、認定病理検査技師、有機溶剤作業主任者の資格を取得しました。
病理検査は大きく「組織検査」と「細胞診検査」に分かれますが、共通して言えることは、技師個人の技量が大きく検査に反映されるということです。
組織検査では、検査特性をしっかり理解し、出来上がった標本の良し悪しを評価する能力が病理技師には求められます。病理診断の根拠となる標本には高い品質が求められ、その標本を作製する病理技師の責任は非常に重いと言えます。また、標本作製の工程には、まだまだ手作業に頼る部分が多く、教科書を学ぶだけでは理解できない「技」も多く存在するため、「技」を若手技師へ伝承することも病理技師の役目と言えます。
細胞診は組織検査よりさらに個人の技量が反映される検査と言えます。
細胞診は婦人科、呼吸器をはじめとして乳腺、甲状腺など、ほぼすべての臓器が対象となります。それら各臓器の正常組織像はもちろんのこと、その臓器特有の良・悪性疾患の組織像と細胞像を理解することが細胞検査士には求められます。場合によっては細胞診の結果が最終診断となるため、細胞検査士の責任は非常に重いと言えます。
私は17年前に細胞検査士の試験に合格しましたが、その時はこれで勉強から解放されたと安堵しました。しかし、それは大きな間違いでした。試験のために勉強してきたことは典型症例であり、実際の業務で標本を観察すると、良悪の判定や悪性腫瘍の組織型の判定に悩む症例が多々あり、資格試験は最低ラインの知識の確認であることを思い知らされました。しかし、個人の技量が上がれば、その努力がダイレクトに正確な細胞判定に繋がるため、非常にやりがいのある業務だと思っています。
現在においても細胞判定に悩む症例が多いため、細胞診に携わる限り学習の継続が必要ですが、後輩の手本となることを目標に、今後も研鑚を積みたいと思います。
私は1988年に就職し、1年間の育児休業と2年間の救急検査勤務を除き、30年以上生体検査で働いてきました。現在、生体検査では検査種類も技師数も増え、専門化が進んでいますが、私は超音波、脳波、聴覚平衡機能など、比較的広い範囲の検査を担当しています。
私が学術活動を本格的に始めることができたのは、子育てが一段落してからでした。43歳で超音波検査士、52歳で認定認知症領域検査技師の資格を取得しました。脳波専門技術師の受験も検討しましたが、複数の資格の維持管理(指定の講習会等に参加し、点数を取得する必要があります)は時間的に難しいと判断しました。そういった経緯もあり、脳波関連では月毎の脳波症例検討会の開催や、いろいろな勉強会・学会等への参加など、規定に縛られず積極的な学術活動を行っています。長年広い範囲の検査を担当する中で、多くの検査に共通する認知症、高齢化、意識障害などに興味を持ち、自身の専門分野と考え積極的に学んでいます。個々の検査だけではなく、臨床面での専門性も臨床検査技師として重要ではないかと考えています。
仕事とプライベートの両立の難しさに直面することも度々ありましたが、自身の成長において貴重な経験だったと思います。いろいろな経験を生かし、患者さんとの一期一会を大切にし、お話しに耳を傾けながら、心を尽くして仕事をしていきたいと思っています。
私は生体検査課で主に神経生理分野を担当しており、日本臨床神経生理学会の認定資格(脳波分野、筋電図・神経伝導分野、術中脳脊髄モニタリング分野)を取得しています。臨床検査技師は単に検査結果を医師へ提出するのではなく、「検査結果から得られた的確な情報を医師へ提供する」ことが大切であると考えています。
例えば、部分的な痺れや脱力といった症状で神経伝導速度検査を行い、数値や波形の結果から全身性に及ぶ病態が予想された場合、医師にその旨を報告し、他の追加検査を提案することがあります。しかし知識が不足していると病態を判断することができず、得られた結果の整合性があやふやなものになります。それは時に誤診を招く可能性にも繋がるため、検査のプロとして知識をしっかり身につけておかなければなりません。それを示す指標が認定資格であると私は考えています。「検査結果から得られた情報を迅速かつ的確に判断し、時には医師へ提案もする」ことが臨床検査技師に求められており、臨床からの信頼につながると感じています。
偉そうに綴っていますが、私も当初は思い通りにいかない日々の連続。中でも術中神経モニタリングでは自施設で前例のない項目に悩まされる日々。そんな折、参加した勉強会で講師に相談したところ「前例がなくてできない、ではダメ。アドバイスなら全国の技師からもらえばいい。自分の施設の最初の人に貴方がなればええんや!」と叱咤激励を受け、挑戦を続ける毎日です。エキスパートって何だろう?明確な答えはありませんが、最新の情報を収集し常に進歩する医療へ対応していく技師、どんな困難な状況であっても自分の知識と経験を用いて検査・患者さん・病態と向き合うことを諦めず挑戦を続ける技師のことではないかと思います。自分には無理と決めず一歩ずつ耕して進めば、きっとそれは貴方にとって永遠の私財となりますよ。
私は入職して2023年4月で26年目を迎えますが、この期間の内、23年間は病理検査業務に従事しています。配属後まもなく細胞診の勉強を開始し、20代で細胞検査士の資格を取得しました。現在、日本人の2人に1人が一生のうち1度「がん」に罹り、3人に1人が「がん」で亡くなる時代です。がんを早期発見し正確な診断に寄与することのできるこの仕事は、現代社会において非常に重要な役割を担っていると思い、日々励んでいます。
病理検査の業務は多岐に渡り、2022年度からは、電子顕微鏡標本作製を担当しています。標本作製にはこれまで経験してきた病理標本作製の技術が、病変部位の観察•撮影には細胞検査士として培った知識が大きく役立っています。しかしながら、極めて微小な小さな試料を、大きな電子顕微鏡装置で観察する」という非常に特殊な分野で、年間500件以上の標本作製を行うことは容易ではありません。師匠には怒られ、褒められの日々です。診断に役立つ良い標本の作製、適切な画像提供を行うためには、電子顕微鏡のより深い知識が必要となります。そこで、さらなる挑戦。2023年は、46歳にして「日本顕微鏡学会電子顕微鏡二級技士技術認定試験」に挑戦しようと考えています。
病理検査をはじめとした検体検査部門の検査技師は、患者さんと直に接する機会が少なく、患者さんにとって馴染みのない存在です(医療ドラマでもイマイチ目立たない存在)。しかし、臨床検査技師の役割は、患者さんが適切な治療に導かれるように、技術と知識を役立てること。日々進歩する医療技術に乗り遅れないよう、常に学ぶ姿勢を持ち続けたいと考えています。