当院について

総胆管結石症に対する腹腔鏡手術

総胆管とは?

肝臓でつくられた胆汁は胆管という管を通って十二指腸へと流れていきます.肝臓の中で胆管は多数の細かい枝に分かれています。それが山を下る川の支流のように徐々に合流してきて、肝臓の外で1本の胆管となります。それを総胆管といいます。その途中に胆嚢があり,ここで胆汁が一時的に貯留されます。正常の胆嚢は食事が胃から十二指腸に移動すると収縮して、タイミング良く胆汁を十二指腸の中へ排出し、消化吸収を助けているのです。(厳密には胆嚢からの流れの合流部より肝臓側を「総肝管」といいますが、ここでは、便宜的に1本化した胆管を「総胆管」として説明を進めます。)

総胆管に結石があると治療が必要ですか?

この総胆管という管の中に結石が存在すると、胆汁の流れが悪くなるため、肝臓の障害や黄疸・胆管炎を生じる可能性が高くなります。胆管炎が重症化するとショック状態や多臓器不全(心臓、肺、肝臓、腎臓などが十分に機能しなくなる状態)となり生命が危うくなります。したがって、総胆管結石が見つかった場合は、手術を含む何らかの治療処置を行うことを強くお勧めします。

総胆管結石にはいろいろな治療方針があります。

総胆管結石の治療方針には、主として以下のようなパターンがあります。
1. 開腹して胆嚢の摘出と総胆管切石術(総胆管を掃除して結石を取り除くこと)を行う。
2. 胆嚢は腹腔鏡手術で摘出し、総胆管結石は内視鏡(胃カメラ)を用いて十二指腸の中から取り除く。
3. 腹腔鏡手術で胆嚢の摘出と総胆管結石の摘除を同時に行う。
上記の治療方針のうちどれを優先的に選択するかということは病院や主治医によって違うことがあります。

当院の治療方針

当院では、上記の選択枝のうち「3. 腹腔鏡手術で胆嚢の摘出と総胆管結石の摘除を同時に行う。」ことを原則としています。
腹腔鏡下総胆管切石術は高度な技術を要するため、この手術を積極的に行っている病院は限られているのですが、
1)手術創が小さいため痛みが少ない。
2)早期退院が可能。
3)1回の手術で治療が完結する。
4)逆流防止の括約筋を温存できる。
という点で他の選択枝より優れていると考えています。

胆石症ガイドラインとの違いについて

ガイドラインでは「2. 胆嚢は腹腔鏡手術で摘出し、総胆管結石は内視鏡(胃カメラ)を用いて十二指腸の中から取り除く」という方法が推奨されています。しかし、この方法では胆管末端の乳頭括約筋(十二指腸への出口を締めて腸から胆管への逆流を防ぐ筋肉)を切開あるいは引き伸ばしてしまうために胆管の逆流防止の機能が消失ないし低下します。将来的に結石の再発、胆管炎、胆管癌の原因となる可能性は否定できません。腹腔鏡下総胆管切石術でも括約筋を引き伸ばすことはありますが、この方法に比べるとその程度はかなり少ないと考えられます。

腹腔鏡下総胆管切石術の方法

①腹部に4ヶ所〈1cm ~ 0.5cm〉の穴を開け炭酸ガスでお腹を膨らませます。


1.胆嚢の石が総胆管に落ちたと考えられる場合
胆嚢管(胆嚢と総胆管をつなぐ管)から胆道鏡を挿入し,総胆管内の結石を除去する(経胆嚢管的切石)。
または
2.もともと総胆管に石ができた場合
総胆管を直接切開し、そこから胆道鏡を挿入して結石を除去する(総胆管切開)。
結石除去後,切開した総胆管を腹腔鏡下に縫合して閉鎖する。

③総胆管の石が取れたら胆嚢は摘出する。

腹腔鏡下総胆管切石術が行えるためのポイント

腹腔鏡下総胆管切石術を予定しても全例出来るわけではありません。その条件は
1)異常な癒着がないこと〈上腹部の手術はしていませんか〉
2)強い炎症がないこと
3)他の臓器〈胆管、十二指腸など〉が損傷しないこと
4)悪性腫瘍を疑わせるような所見がないこと  などです。
最終的には術中に確認することになります。術中に種々の理由で腹腔鏡下総胆管切石術が困難と判断した場合は開腹術に移行します。

腹腔鏡下総胆管切石術の症例数と完遂率・成功率

1991年から2012年までの間に534例の腹腔鏡下総胆管切石術を施行しています。うち胆嚢管から結石を取り出したのは261例、総胆管を直接切開したのは273例でした。腹腔鏡手術を完遂できたのは516例(96.6%)で、そのうち総胆管結石摘出の成功率は97.7%でした。(図1)

腹腔鏡下総胆管切石術の治療成績:術後合併症について

2003年から2012年までに手術を施行した294例で、術後合併症は13.5%に発生しました。そのうちわけは胆汁漏出(5.8%),創感染(4.1%)など多岐にわたります。それらの合併症のほとんどは、再手術などの処置を要さずに保存的に軽快しました。開腹して止血を必要とするような「出血」は1例(0.1%)のみでした。また、この期間に手術が原因で命を失った患者さんは1人も経験しておりません。
(図2)

腹腔鏡下総胆管切石術の治療成績:結石の再発について

ガイドラインでは総胆管結石に対し経乳頭的治療(胃カメラで十二指腸内から総胆管の結石を取り出すこと:乳頭括約筋は温存されません。)が推奨されています。一般的に、この治療を行った場合の総胆管結石の再発率は8~15%と言われています。
当院で行われた腹腔鏡下総胆管手術の後に総胆管結石が再発した患者さんの割合は8.9%でした。その中でも、「胆嚢の結石が総胆管に落下した」と推定される患者さんにおける再発率は0.9%で、極めて低く抑えられています。私たちの腹腔鏡手術では、「乳頭括約筋を温存できること」と「結石の再発率を低くすること」が同時に達成されています。(図3)
総胆管の切開をした場合は、将来的に胆管の狭窄が心配になりますが、実際に狭窄を認めた症例は1%のみでした。(図3)

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