da Vinciサージカルシステム(図1)は、ロボットの支援のもとで腹腔鏡手術を遠隔操作で行う手術支援装置です。米国ではすでに1700台以上(2012年9月現在)が稼働しており(図2)、前立腺癌に対する前立腺悪性腫瘍手術の約90%はロボット支援手術で行われています。日本においても平成24年12月現在、75台がすでに導入されており、急速に拡大しています。
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近年患者さんに負担の少ない低侵襲手術が普及するのに伴い、さまざまな手術が腹腔鏡手術へ移行しています。当院泌尿器科でも1998年より腹腔鏡下副腎摘出手術、2007年より腹腔鏡下腎摘出術、そして2011年からは腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術を導入し、2012年8月1日には腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術の保険適応の施設認定を取得するなど、患者さんに負担の少ない低侵襲手術を積極的に行ってきました。
2012年11月、患者さんにより質の高い低侵襲手術を提供する目的で最新医療機器であるda Vinciサージカルシステムを導入しました。現在、我が国では泌尿器科領域の前立腺癌に対するロボット支援腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術が保険適用として認められています。当院でもこのたび前立腺癌に対するロボット支援腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術を開始しました。(今後、保険適用として認められ次第、外科領域でもロボット支援手術を行う予定です。)
当院におけるロボット手術風景
当院では泌尿器腹腔鏡手術認定医師およびロボット手術認定医師が常駐していますが、医師のみならず看護師、臨床工学師、事務職を含めた専属のda Vinciチームを編成して導入準備段階から現在に至るまでチームとしての手術を行っています。
前立腺癌に対する手術として、従来の開腹手術では下腹部を15cm程度切開して前立腺を全摘する方法が行なわれていました。しかし、開腹手術では手術による体の負担(手術侵襲)が大きいために社会復帰に長期間を要することや、大きな傷が残ることなどが欠点として挙げられます。このような欠点を補うため、腹腔鏡下前立腺全摘除術が開発されました。腹腔鏡下手術では、お腹に0.5~1.2cmの小さな穴を5カ所開け、その穴からお腹の中を観察する腹腔鏡(ハイビジョン対応)や手術器具を挿入し、モニター画面に拡大して映し出されたお腹の中を観察しながら手術を行ないます。出血も少なく、傷も小さくて術後の痛みも少ないため体力の回復も開腹手術より早いと言われています。
さらに最新医療機器であるda Vinciサージカルシステムによるロボット支援腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術(ロボット支援手術)では、医師は座位にて長時間安定した姿勢で遠隔操作を行い、3次元(3D)映像を見ながら(図3)人間の手首以上の可動域を獲得したより精度の高いロボットアーム(図4)を用いて手術操作を行うことが可能であり、従来の腹腔鏡手術の弱点であった縫合操作を確実に行うことが可能となった新時代の低侵襲治療です。