尿路結石

より負担が少なく、より効果的な尿路結石治療を目指して

進化する尿路結石治療と当院の取り組み

尿路結石は、腎臓から尿管、膀胱、尿道までの尿の通り道(尿路)に石ができる病気です。突然の激しい痛みや血尿などの症状を引き起こすことがあり、多くの方が経験しうる身近な疾患の一つです。
当院は長年にわたり、尿路結石治療に真摯に取り組んでまいりました。体の外から衝撃波を当てて結石を砕く体外衝撃波砕石術(ESWL)、背中に穴を開けて内視鏡で直接結石を取り出す経皮的腎尿管砕石術(PNL)、そして尿道から細い内視鏡を挿入しレーザーで結石を砕く経尿道的腎尿管砕石術(f-TUL)といった標準的な治療法を駆使してきました。
そしてこの度、2025年より、二つの新しい治療法を導入いたしました。
これにより、これまで以上に幅広い選択肢の中から、最適な治療をご提案できる体制が整いました。

当院が提供する尿路結石治療の選択肢

尿路結石の治療法は一つではありません。結石の大きさ、存在する場所(腎臓、尿管、膀胱)、そして硬さなど、千差万別です。
そのため、専門医が正確な診断に基づき、これらの要素を総合的に判断して最適な治療法を選択することが、効果的で安全な治療への第一歩となります。
以下に、そのための多彩な治療選択肢をご紹介します。

これまでの標準的な治療法

体外衝撃波砕石術(ESWL)

体の外から衝撃波(エネルギーを集中させた音波の一種)を結石にめがけて照射し、細かく砕く治療法です。この治療法の最大の特徴は、メスを使わずに体の外からアプローチするため、体への負担が非常に少ない(低侵襲)点にあります。
主に、比較的サイズが小さい腎結石や尿管結石が良い適応となります。
レントゲンで結石の位置を確認しながら結石に衝撃波の照準を合わせて破砕します。
硬い結石や大きな結石、照準を合わせにくい結石の時は複数回の治療が必要な場合や、われない場合もあります。

経尿道的腎尿管砕石術(TUL/f-TUL)

尿道から非常に細い内視鏡を尿管に挿入して、直接結石を見ながら破砕する方法です。視野を確保するために尿管に生理的食塩水をいれながら行います。
この治療法は、尿管にある結石はもちろんのこと、内視鏡技術の進歩により、腎臓内の結石も安全に治療することが可能となりました。
結石が尿管の上の方にある場合や腎臓内にあった場合は、先端が自由に曲がる軟性尿管鏡という内視鏡を挿入し、結石を直接モニターで見ながらレーザーで細かく砕きます(f-TUL)。場合によってはバスケット鉗子という器具で結石を体外に摘出します。
手術中、内視鏡は何度も出し入れされます。内視鏡の出し入れを容易にし、腎臓内に入る水の圧力を調整するために尿管アクセスシースという特殊な器具を使用します。尿管アクセスシースは、手術中に尿管内に留置する細い管で、いわば「尿管を保護するためのトンネル」のような役割を果たします。
このシース(トンネル)を通して器具を操作することで、デリケートな尿管の粘膜を傷つけるリスクを大幅に回避し、より安全な手術が可能となります。これにより、手術後の痛みや、長期的な合併症である尿管狭窄(尿管が狭くなること)のリスクを大幅に低減させることが期待できます。
現在はESWLに代わり、結石治療の中心となっている治療法です。
ただし大きい結石では結石を砕いても摘出することが難しく、視野も悪くなるため別の手術方法を選択することがあります。
内視鏡が結石に届かないと破砕ができないため、成功率を上げるために手術前に尿管ステントという腎臓と膀胱をバイパスする管を入れる場合があります。


上図:©2021 Boston Scientific Corporation. All rights reserved.

経皮的腎尿管砕石術(PNL)

背中の皮膚から超音波(エコー)を使い、腎臓に向かって穴を開け、そこから内視鏡を直接挿入し、結石を砕きながら体外に取り出す手術です。サイズが大きい結石や、サンゴ状結石のような腎臓の中で大きく複雑な形に成長した結石に対して特に有効で、一度の手術で多くの結石を除去できるという特徴があります。大きな結石に非常に有効な一方、背中に穴をあけるという体への負担も伴うため、慎重な判断と計画が不可欠な手術です。術後には一時的に背中に管を挿入することになります。
当院では腎臓から挿入する内視鏡(腎盂鏡)は細径のものを使用して、より侵襲が小さくなるよう工夫しました。

2025年より導入した二つの新しい先進的治療法

医療技術は日々進歩しています。これまでの治療法ではアプローチが難しかった症例や、より負担を軽減するための新しい選択肢が生まれています。当院では、これらの先進技術を積極的に取り入れ、治療の質をさらに高めることを目指しています。

【新治療法①】ECIRS(エシルス)

大きな結石を一度の手術で取り除くハイブリッド手術です。
ECIRS(内視鏡併用腎内手術)は、従来のPNL(背中からのアプローチ)とf-TUL(尿道からのアプローチ)という二つの内視鏡手術を同時に行う、いわば「ハイブリッド治療」です。特殊な手術体位(Valdivia体位)をとることで、二方向から同時に結石にアプローチし、より効率的かつ確実に結石を除去します。
最大の利点は、サンゴ状結石のような複雑な結石に対し、一度の手術でより多くの結石を除去できる可能性が高まる事です。上方からはPNLで、下方からはTULで結石を挟み込みます。PNLではレーザーまたはリソクラスト(圧縮空気を利用した器械)を使用し、TULではレーザーを使用して同時に結石を破砕します。ECIRSはPNL単独治療と比べて、結石除去率をさらに高めることができます。
また二つの異なるアプローチを組み合わせることで、より安全に手術を進めることが可能となります。PNLは腎臓に針を刺して、内視鏡が挿入できるまで拡張する手術です。
腎臓は血管の塊のため、血管が少ない部位を穿刺する必要がありますが、超音波(エコー)で血管の少ない部位を穿刺するという専門知識が必要な手技が必要です。
ECIRSでは腎臓に穴をあける前に尿管鏡を先んじて腎臓内に挿入することで、体外から腎臓に刺した針を体内から直接見ることが可能です。さらに従来通りの超音波(エコー)を組み合わせることで、血管の少ない部位に穴をあけられる可能性が高まり、出血リスクを減らすことができます。


上図:International Journal of UrologyVolume 25, Issue 2 pp. 121-133

 

【新治療法②】大きな結石に対してのf-TUL(FANS)

:Flexible and Navigable Suction Access Sheath(FANS)を使用したf-TUL

従来のf-TUL手術を、さらに安全かつスムーズに効率よく結石を除去するために、【吸引機能付き尿管アクセスシース】という特殊な器具を使用する先進的な手法です。従来のTULでも尿管アクセスシースは使用していましたが、そこに吸引機能を付加したものです。従来のf-TULでは大きな結石を割っていると、割れた結石が舞い上がり霧状となるため石が見えなくなります。また、結石を摘出するためにはバスケット鉗子という特殊な鉗子を使用しなくてはいけませんでした。
FANSでは尿管アクセスシースに吸引機能をつけることで、割った石を直接吸引し、視野の確保と結石の除去を同時に行う事ができるようになりました。アクセスシースに挿入した軟性尿管鏡とともにシースの先端が曲がることで、今までは近づけなかった結石にまで対応できるようになり、より効率的に結石を吸引できるようになりました。結石まで近づけて今までは腎臓に穴をあけるPNLをしなければならなかった長径3cmほどの大きな結石も、このFANSという手術では穴をあけずに効率的に摘出する可能性が高くなりました。
当院で採用しているホルミウムYAGレーザーはDustingという、結石を砂状にまで小さくする機能がついており、これに径2.5-3.0mmの細径軟性尿管鏡を使用することでさらに効率的に結石を除去できるようになりました。
TULの問題点は①腎盂内圧上昇、②結石破砕片の残存、③レーザーによる熱損傷です。持続的吸引は安全な低圧環境を維持し、クリアな術野と効率的な破砕片除去を実現し、さらにレーザーによる熱損傷のリスクを低減させます。
しかし、吸引し続けると腎臓の中の空間が狭まくなり手術野を確保しにくくなります。そのため従来のf-TULよりも多くの生理的食塩水を使用します。
小さな結石に対しては従来通りのf-TULの方が体への負担は少なくなります。FANSは大きな結石や内視鏡やバスケット鉗子が挿入しにくい部位の結石に適応となります。サンゴ状結石などの複雑で大きな結石はECIRSの適応となります。
また結石を除去する際に尿管鏡が結石でこすれることで壊れやすくなります。
当院ではFANSを使用する際にディスポーザブル尿管鏡(使い捨て)を使用しています。


上図:Welleadホームページより



上図:当院撮影

各種治療方法のまとめ

治療法 アプローチ方法 主な対象となる結石 主なメリット
ESWL 体の外から衝撃波を照射 比較的小さな腎結石、尿管結石 メスを使わず、体への負担が少ない。
PNL 背中から腎臓に穴をあけ挿入 サンゴ状結石など、大きな腎結石 大きな腎結石を効率的に砕石できる。
f-TUL 尿道から軟性内視鏡を挿入 腎結石、尿管結石 石を直接見ながら、体に傷をつけず砕石できる。
ECIRS 背中と尿道の両方から挿入 サンゴ状結石など、特に大きく複雑な結石 一度の手術で高い結石除去率が期待でき、PNLより出血砕石効率が良い。
FANS 尿道から軟性内視鏡を挿入 腎結石、尿管結石 吸引式尿管アクセスシースを使用して結石を破砕しながら吸引除去できる。

一人ひとりに最適な結石治療を

これまでに解説したように、尿路結石治療には多様な選択肢があります。どの治療法が最適であるかは、結石の状態、全身の状態、そしてご希望を総合的に考慮して判断します。
当院では、ESWL、PNL、f-TULという確立された標準治療に加え、ハイブリッド手術であるECIRS、そしてより安全性と効率を高めた吸引機能付きアクセスシースを使用したFANSという新たな選択肢が加わりました。これにより、小さな結石から非常に大きく複雑な結石まで、あらゆるタイプの尿路結石に対して対応できるようになりました。
どの治療法がご自身にとって最適なのかは、CTやレントゲンなどの精密検査と医師による診断に基づいて決定されます。尿路結石で不安でお悩みの方は、どうぞ安心して当院にご相談ください。私たちが最適な治療の道を一緒に見つけてまいります。