腎移植・膵移植をお考えの方に

移植をお考えの方に

腎移植をお考えの方に

はじめに

腎臓は下記のような多彩で重要な働きがあります。

・尿を作り老廃物や余分な水を体内から排出する
・血圧を調整する
・造血ホルモンを分泌して血液(赤血球)を増やす
・ビタミンDを活性化して骨を丈夫にする

これらの機能が低下し慢性腎不全になると腎代替療法(血液透析・腹膜透析か腎移植)が必要になります。この中で何を選択するか主治医の先生とよく相談することが必要です。もっとも機能の回復の効率が良い治療が腎移植です。透析を経てから移植に進む方が多いですが、最近では移植を第一に選択する人も増えてきています。誰から腎臓を提供していただくかが問題で、生体腎移植と献腎移植に分かれます。

a) 生体腎移植

血縁者や夫婦など生きている方(生体ドナー)から腎臓を1つ提供していただきます。腎臓をいただける範囲は6親等以内の血族か3親等の姻族までになります。

ドナーさんの自発的な意志が重要になります。検査をして片方の腎臓を提供しても健康状態に問題がないかを検査します。またクロスマッチという検査でドナーさんとの免疫学的な相性を調べます。 移植の既往や妊娠、大量輸血などの既往がある人では難しい事があります。血液型が異なっていても移植は可能なことがほとんどです。最近では高齢のドナーさんも増えています。

全身麻酔で3時間ほどの手術になります。翌日から食事、歩行を開始し入院は術後1週間ほどです。当院では図に示すような切開法になります。

腎移植を受ける人をレシピエントと言います。通常は右下腹部にドナーさんの腎臓を移植します(通常は自分の腎臓はそのままにしておきます)。

術前1週間の入院(血液型不適合では2週間)で、順調なら術後3週間の入院となります。手術は4-5時間ほどかかります。

b) 献腎移植

脳死または心停止したドナーさんから提供された腎臓での移植を献腎移植と言います。このためには日本臓器移植ネットワークへの登録と毎年の更新が必要となります。透析に入っている方とeGFR(推定糸球体濾過量)15ml/min未満の慢性腎不全の方は登録が出来ます。透析または通院している施設にご相談の上、紹介状を作成していただき、当院献腎外来に受診してください。
ドナー候補がでると血液型、待機年数、クロスマッチ、HLA(白血球タイピング)、居住地域から計算されて点数の高い順にレシピエントが選択されます。そこから連絡を進め準緊急手術になります。
当院での平均機年数は15年前後となっています。

当院の手術数と生着率(腎臓が機能する期間)を示します。

予約方法はこちら(地域医療連携室)

参考;『腎移植 あなたの疑問にすべて答えます 2018』バリュープロモーション発行(外部リンク)

膵移植をお考えの方に

はじめに

1型糖尿病は膵臓のインスリンを出すベータ細胞が壊されてしまい、生涯にわたりインスリン投与が必要になる病気です。多くの患者さんでは糖尿病専門医の治療で血糖コントロールが可能ですが、低血糖に苦しむ方も多く、病気が進行すると慢性腎不全や糖尿病性網膜症を合併します。このような方にドナーさんから膵臓や腎臓を提供していただくのが膵(腎)移植です。当科では脳死になったドナーさんから提供された臓器で膵腎同時移植または腎移植後膵移植を行っています。

1 膵移植の適応

膵臓移植中央調整委員会が適応を判定します。現時点での適応は下記のようになっています。

(1)対象
①腎不全に陥った糖尿病患者であること。 臨床的に腎臓移植の適応がありかつ内因性インスリン分泌が著しく低下しており、移植医療の十分な効能を得る上では膵腎両臓器の移植が望ましいもの。患者はすでに腎臓移植を受けていてもよいし、腎臓移植と同時に膵臓移植を受けるものでもよい。

②1型糖尿病患者で、日本糖尿病学会専門医によるインスリンを用いたあらゆる治療手段によっても血糖値が不安定であり、代謝コントロールが極めて困難な状態が長期にわたり持続しているもの。本例に膵臓単独移植を考慮する場合もあり得る。

(2)年齢
年齢は原則として60歳以下が望ましい。

(3)合併症または併存症による制限
①糖尿病性網膜症で進行が予測される場合は、眼科的対策を優先する。
②活動性の感染症、活動性の肝機能障害、活動性の消化性潰瘍。
③悪性腫瘍

原則として、悪性腫瘍の治療終了後少なくとも5年を経過し、この間に再発の兆候がなく、根治していると判断される場合は禁忌としない。しかし、その予後については腫瘍の種類・病理 組織型・病期によって異なるため、治療終了後5年未満の場合には、腫瘍担当の主治医の意見を受けて、移植の適応が考慮される。

2 膵腎同時移植

慢性腎不全になった1型糖尿病の方に脳死ドナーさんから膵臓と腎臓の提供を受けて移植します。透析に入っている方は勿論、透析に入る前でもeGFR(推定糸球体濾過量)15ml/min未満の慢性腎不全であれば登録が出来ます。膵臓の登録は膵臓移植中央調整委員会に申請し、適応があるとされた時点で日本臓器移植ネットワークに登録します(初回登録料3万円、毎年の更新費5000円)。腎臓の登録はまた別個に行い同じ登録料がかかります。
保険適応になっていますので、医療費は通常の保険診療と同様の3割負担となります。高額医療制度も利用可能で、障害者手帳や更正医療などは継続して利用できます。本邦の平均待機期間は3年前後です。


John D. Pirsch, Jon S. Odorico & Hans W. Sollingerより

手術方法は基本的に図のようになります。

術後は集中治療室で数日管理され、おおむね1ヶ月くらいの入院が必要になります。腎臓が機能すれば透析からの離脱、膵臓が機能すればインスリンが不要になることが期待されます。

3 腎移植後膵移植

インスリン注射はさておいて、慢性腎不全・透析からまず離脱したい希望が強ければ、まず親族をドナーとした生体腎移植を行い、落ち着いた後で膵臓だけを脳死ドナーさんからいただいて移植をするのが腎移植後膵移植です。この場合、最初に左側に腎臓を移植しておいて、膵臓は右側に移植するのが通常です。

当院の移植成績を示します。

膵(腎)移植を希望される場合は透析または糖尿病で通院している施設にご相談の上、紹介状を作成していただき、当院献腎外来に受診してください。膵臓からインスリン分泌能が枯渇しているデータがあれば申請に際しては円滑に進みます(空腹時血清Cペプチド0.3ng/ml以下、かつ、グルカゴン負荷後血清Cペプチド0.5ng/ml以下)。

予約方法はこちら(地域医療連携室)