胸部や腹部の手術の傷跡が赤く盛り上がり、かゆみが出ることがあります。通常の傷跡は、時間とともに白く目立たなくなります。6ヶ月以上しても隆起、赤みが治らず、周囲の正常組織に広がっていくのがケロイドです。外観が問題となるだけでなく、強いかゆみ、痛みを伴います。ケロイド表面の凹凸が強いものでは、深部で感染を起こし、排膿を繰り返す場合もあります。
ケロイドを単純に切除するだけでは再発し、元のケロイドより大きくなってしまいます。
ケロイドの再発を防止するためには、外科的治療に放射線療法を組み合わせることが必要です。当院ではケロイドの切除後に、放射線科に依頼し電子線照射を行うことで、よい成績を得ています。
手術は小さいものであれば局所麻酔で行いますが、大きいものでは全身麻酔が必要になります。ケロイドを切除し周囲の皮膚を縫い寄せます。縫合面にかかる張力を減らす目的で、真皮縫合を併用します。
術後1週間から手術した部に電子線照射を開始します。電子線とは放射線の一種であり、ケロイドを作り出す線維芽細胞の増殖を抑えます。1回5Gyで連続4日~5日間、総線量20~25Gyの照射を行います。一回の照射にかかる時間はわずかで、痛みはありません。電子線は、目的部位である皮膚表面付近に限定して照射され、内臓や骨には達しません。