頚動脈狭窄症について

頚動脈狭窄症について

頸動脈狭窄症の概要

・心臓から脳に血液を送る主要な通り道である頸部の動脈が狭くなることを「頸動脈狭窄症」といいます。
・これが原因で脳血流の低下をきたす、もしくは狭窄部からの脂肪や血栓などの飛散により脳梗塞の原因となる可能性があります。
・頸動脈狭窄症の多くは動脈硬化が原因です。
・動脈硬化は血管の壁の厚みが増す現象で、コレステロールなどの脂肪からなる粥状(じゅくじょう)硬化巣である「プラーク」が形成されることがあります。
・同じ厚さのプラークでも繊維成分が多い安定プラークと、脂肪成分が多い不安定プラークがありますが、不安定プラークは特に脳梗塞を引き起こす危険性が高いため積極的な治療が必要です。

頸動脈狭窄症が疑われた場合どうするか?

・一過性脳虚血発作や脳梗塞を発症して初めて頸動脈狭窄症が発見されることが多いです。
・脳ドックなどの頸動脈超音波で無症候性(まだ症状を出していない)の狭窄が指摘されることもあります。
・狭窄部の詳細な評価のために、造形CTや頭頚部MRIを撮影することがあります。
・脳血流評価のために、脳血流検査(アイソトープ検査)を行うことがあります。
・頸動脈狭窄症をもつ方のなかには、冠動脈(心臓に血流を送る血管)狭窄を合併している場合がありますので、冠動脈造影や循環器内科に受診していただく場合があります。

頸動脈狭窄症の治療方法

①内科治療
・まずは高血圧、糖質代謝異常、脂質異常などの動脈硬化の危険因子となっている疾患の治療を行います。必要に応じて禁煙・禁酒などの生活指導を実施します。
・プラーク安定化(脂肪を飛散させにくくすること)を図るために高脂血症治療薬を内服していただくことがあります。
・必要に応じて抗血小板薬(血液をさらさらにしてプラーク表面に血栓が付着しにくくする薬剤)も内服します。

②外科治療
・狭窄率が高い場合には脳梗塞予防として外科治療を検討した方が良い場合があります。
・脳卒中治療ガイドライン(2021)によると、症候性の病変で狭窄率が70%以上の場合には上記内科治療に加えて外科治療を行うことは妥当とされています。
・無症候性の場合、高度狭窄であることに加えて脳卒中を来すリスクが高いと判断される病変に対しては外科的治療を行うことが妥当とされています。
・外科治療には以下の2種類があります。それぞれ一長一短であり、どちらが適しているかは病態や全身的・解剖学的要因により個別に判断されます。

Ⅰ.頸動脈内膜剥離術(Carotid endarterectomy: CEA)
・CEAは全身麻酔ののちに頸部皮膚を切開して頸動脈を露出、その後、手術顕微鏡を用いてプラークそのものを摘出(図1-2)し、狭窄を解除(図3)する治療です。
・手術に伴う脳梗塞の発症率は低く、柔らかいプラークや全身血管の蛇行が強い場合にも施行可能というメリットがあります。
・全身麻酔の負担があること、首に多少手術の痕が残るなどのデメリットがあります。

Ⅱ.頸動脈ステント留置術(Carotid artery stenting: CAS)
・ステントという金属メッシュを円筒状にした機材(図1)を留置して狭窄を解除する治療です。
・足の付け根から(血管形状によっては腕から)カテーテルという管を挿入し、治療中にプラークが飛散しないように工夫をした上で狭窄部を風船状のカテーテルで拡張した後、ステントを展開します(図2~5)。
・局所麻酔で施行可能なこと、首に傷が残らないメリットがあります。
・CEAと比較して術後脳梗塞が発症しやすい、造影剤(血管撮影に使用する薬剤)を使用するため腎臓の悪い患者さんには注意が必要である、抗血小板薬をしばらく(半年から1年程度)継続しなくてはいけないデメリットがあります。

頸動脈狭窄症に対する当院での治療の特徴

・当院では、治療法(内科治療または外科治療)の検討にあたり、脳神経内科と脳神経外科の合同カンファレンスを行い、最善の方法をご提案できるように努めています。
・外科治療法としてのCEAとCASは、どちらかに偏ることがないよう、それぞれがもつ有効性や安全性を考慮した方法を提案いたします。
・CEAとCASは、それぞれを専門とするチームが担当することで、手術の合併症リスクを可能な限り下げられるようにしています。